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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第53章 初詣


「……落ち着いた?」

みわの表情は晴れない。
でも、泣いているわけでもない。

あの女になにか言われたのか。
どうしたんスか、もー……。

「うん……」

「……言ってもいいと思ったら、話してくれればいいっスよ。ほら、お祖母さんのとこ行かなきゃ。時間でしょ」

オレたちは、みわのお祖母さんの家に新年の挨拶に伺う。

移動中は、気まずくなることもなく、いつも通りのふたりだったと思う。
多分。





「新年明けましておめでとうございます」

お祖母さん宅、以前朝ごはんをご馳走になった居間で3人揃ってのご挨拶。

「よく来てくれたわねえ、ふたりとも。今お茶淹れるからちょっと待ってね」

お祖母さんが立ち上がろうとすると、みわがそれを手で制止して立ち上がった。

「あ、おばあちゃん、私いれるよ!」

「あら、いいの?」

「うん! 私、記憶も戻ったんだから! もうバッチリ! なんでも任せてよ!」

パタパタと台所に向かってしまう。

「え……?」

お祖母さんの顔が曇った。
何故だ? 喜ばしいことであって、決してそんな表情になるような事では無いはずだ。

「……あの子の記憶が戻った、って本当?」

「あ、ハイ、……全部じゃないんスけど……多分これからゆっくり話すと思うっス」

「……性的な被害に遭ったこととかは……朧げになっていたりする?」

「どうして分かるんスか?」

「……」

「あの……」

「……あの子の記憶がなくなるのは、今回が初めてではないの」

「え?」

どういう意味だ?

「あの子は以前にも」
「お待たせ。そこに置いてあったお菓子も持って来ちゃった」

「あ、ああみわ、いいんだよ。皆で食べるために買っておいたんだから」

「えへへ、いただきまぁす」

みわが来てから、その話の続きが話されることはなかった。



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