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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第53章 初詣


コンコン、と洗面所のドアを叩く音がする。

「……みわ? どうしたんスか? 凄い音がしたけど」

涼太の
涼太の
涼太の

頭の中が醜い感情で満たされてしまう。
何も考えられない。

「……っなんでも、ないっ」

「みわ?」

「あ、リョウタ〜ありがとね」

パタンという音と共にSariさんの声が響く。
涼太の、初めてのひと。

「あたし帰るね。またお礼は後日にでも」

「Sariサン」

「ん? そんな他人行儀に呼ばないでよ。いいよ、いつも通り『さりあ』で」

親しげな、名前呼び。
ドロドロした感情で、胸が詰まる。

「アンタ、みわに何か言ったんスか」

「……キスしてくれたら、教えてあげる。セックスでもいいよ?」

やだ、やだやだやだやめて。
耳を塞いだ。

「帰れ。二度と来るな」

ぴしゃりとそう言い放った涼太の声の後に玄関のドアが乱暴に閉まる音がした。

自業自得なのかな。
涼太は反対していたのにいいひとぶってSariさんを家にあげて、挙句にあんなこと聞かされて。

嫉妬なんてしたって意味が無いから考えたくないのに。

彼女を見るたび、涼太と並ぶ姿を、涼太に抱かれている姿を想像してしまう。

「みわ、出ておいで」

「……」

「みわ」

観念して洗面所のドアを開けた。
涼太が目の前に立っているけど、顔を合わせることができない。

「なんか嫌な事言われた?」

違う。
だってあれは事実だから。

下を向いて首を横に振った。

「あのヒトのあれは……自分のオモチャが取られたような気になってるだけっスから」

「オモチャ……?」

「そう。彼女にとってオレはただのオモチャだ」

なに、それ……

「ねえ、みわ」

涼太がそっと近寄って両腕を私の背中に回した。

「……何が不安? オレ、みわしか見てないっスよ」

分かってる。
私を不安にさせないように、気遣ってくれてるの、分かってる。

「……ごめん、なさい」

「なんで謝るんスか」

こんな小さい事に拘っているなんて知られたくない。

でも、彼女が涼太にとって大事な思い出のあるひとなんて受け止めたくない。

ううん、ただ、受け止められないだけ。


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