第53章 初詣
先輩方も午後から予定があるとの事で、9時過ぎには解散してしまった。
おばあちゃんの家には午後から行くことになっている。
午前中はお友達が来ると言っていたから、一度家に戻る事にした。
マンションのエントランスに入ると、オートロックの前で蹲っている女性が。
「あの……どうかされましたか?」
気分が悪いのかと声を掛けると、Sariさんだった。
「カギ……中に置いたままゴミ捨てに来ちゃった……」
「……何してんスか」
涼太は、気にも留めてないといった風に冷たい態度。
「大丈夫ですか? こんな寒い所で……立てますか?」
ゴミを捨てにきただけとあって、すごい薄着だ。
差し伸べた手を握られると、外の寒さとは対照的に熱くなっていた。
「Sariさん、熱が」
「……寒い……」
ブルブルと震えている。
「涼太……!」
「別に、子どもじゃねーんだから家に戻りゃ薬でもなんでもあるんじゃないスか。ほら、Sariサン開けるっスよ」
涼太はそう言ってオートロックを開け、私の手を引いて行こうとする。
「ま、待ってよ涼太! あんな状態で放っておけないよ!」
「いいんスよ、彼氏でもなんでも呼ぶでしょ」
後ろではフラフラとドアを抜ける彼女の姿が。
確かに、涼太にキスしたのは怒ってる。
過去の事に嫉妬もしてる。
でも、それとこれとは話が別!
「ごめんなさい、涼太! 私やっぱり無理だよ! Sariさん、歩けますか?」
「ちょっと、みわ」
「……ありがとう……」
「おうちにお薬ありますか?」
「……ない……」
涼太の方を振り向くと、まさかという顔をされる。
「Sariさん、うちに来て下さい。せめて、熱が下がるまで……」
「……みわ、マジで言ってんスか」
Sariさんを支えながらなんとか帰宅し、私の部屋のベッドに寝かせた。
「……ねえみわ、何考えてんスか」
現在、廊下で涼太のお説教中。
怒られているというよりも、完全に呆れられてる。
「……ごめんなさい」
「とにかく、熱が下がるまでっスからね。下がったらすぐに帰すこと」
「はい……」
「大体、オレたちも午後」
「栄養あるお粥作らなきゃ! ……あ、ごめんなさい、なに?」
「……なんでもねぇっスよ……」