第52章 大晦日の出会い
「……高校生のガキのくせに何言ってんだって感じっスよね……」
「そんな事思ってないよ! 嬉しい……」
指にはめたり、外してチェーンを通したり眺めたりしていると、また涙が滲んできた。
嬉しい。
本当に、嬉しい。
「みわ、さっきからずっとそうしてる」
「だって……嬉しいんだもん……」
涼太が寄り添ってきたから、指輪は左手の薬指にはめて私も身体を寄り添わせた。
「……みわ、オレはみわだけだから」
「うん、私だってそう」
「トラブルにならないよう……言っておきたいんスけど」
「ん? なぁに?」
「……さっき、嫌な思いさせてごめん。オレと彼女は、付き合ってたとかじゃないから。ただ、中学でオレが荒んでた頃、気に入られてた」
「そうだったんだ……」
良かった。付き合ってた、とかじゃなくて。
そんな風に思う自分が嫌だ。
今は、私と付き合ってるんだから、いいじゃない。
こうして、愛されてるんだから。
自信もっていかなきゃ。
でも、あんな綺麗で大人なひと。
取られちゃう。
不安になる。
「……あと……隠したくないから言うんスけど…………彼女とは、寝たことがある」
「……あ、そう……なんだ」
寝たことが、……ある。
その一言が、自分で思うよりもずっとこころに重く響いた。
それは、涼太があのひとをこうやって抱いたということ。
「……ショック?」
「う、ううん……昔のこと、だし……いまは、わたしと…………だし……」
……いやだ、またこころが黒くなる。
過去の事だ。気にしたって仕方ない。
仕方ないの。
さっきとは違う涙が出てきた。
顔を上げずに、涼太の胸に埋める。
みっともない嫉妬だ。
過去になんてどうやっても戻れやしないのに。
今ここにいる涼太でどうして満足できないの。
どうして、過去も全部ひっくるめて欲しいと思ってしまうの。
「……ごめん、みわ。今言うべきじゃなかったっスね」
涼太が悲しそうに、私を撫でた。
「ううん……涼太以外のひとからそういうの、聞きたくない」
もし彼女から聞かされたら、ショックじゃ済まなかったかもしれない。
これは、涼太の誠実さだ。