第52章 大晦日の出会い
「キャラものでもなんでも、みわが持ってたら可愛いっスよ。寒いから着けなよ」
この寒空の下、不毛な言い合いをしても良い事は何もないだろう。
諦めて私はカバンから……涼太と色違いの、黄色いタータンチェックのイヤーマフを出した。
無言でササッと装着する。
「……」
そのままササッと歩き始める。
「……それ、お揃い?」
「……」
「みわちゃん」
「……はい……」
「耳隠れてて見えないけど、照れてる?」
はい。でも、耳だけじゃなくきっと顔自体が赤いですよね。
分かって、います。
「なーんで恥ずかしがってるんスか?」
涼太がニヤニヤしているのが分かる。
「こっそりお揃い買うとかイタすぎるし……」
黄色だし。
「イタくないっスよ。嬉しいし。可愛いっスよ、黄色」
「……もう言わないで……」
「みわはホントにオレの事が大好きなんスねぇ」
「……そうですけどだめですか」
「ん? なんスか聞こえなかった」
「うそつき! いじわる!」
「ほーら、手」
再びポケットに誘導される。
中の手はとても温かかった。
「帰ろ」
「……うん」
胸が、あったかい。
寒空の中、手を繋いで歩き出した。