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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第52章 大晦日の出会い


「ありがとうございましたー!」

お店の外に出ると、外は一層寒さを増していた。

折角温まった身体が、すぐに冷えていくのが分かる。

「寒いっスね」

右手が涼太の左側のポケットに誘導されて、またポケットの中で手を繋いだ。

「どっかブラブラしてから帰る?」

「うん、少しだけお散歩したい」

恥ずかしくて火照った頬にはこのくらいの寒さがちょうどいい。

駅まで少し遠回りして街を歩いていると、ちらりと白い粒が目の前を舞った。

「あ、雪だ!」

「うわホントっスね、寒いと思ったら」

ちらちらと舞い降りる雪は幻想的で、妖精さんたちが私たちの周りを飛び回っているようだった。

「……綺麗」

落ちては溶けて消える雪が少し寂しくて。

暫くの間、ふたりで空を見てた。




「ひえー、寒くて耳がちぎれそうっス」

「涼太……あのね、これ」

そっと手を離してからカバンから小さな包みを出して、涼太に手渡す。

「うん? なんスか?」

「あの、遅くなっちゃったんだけど、クリスマスプレゼント。良ければ使って」

「うわ、マジっスか! 開けていい?」

「大したものじゃないよ」

ガサガサと袋を開けている姿はまるで、サンタさんからのプレゼントを確かめる子どもみたいで、あどけなくて可愛い。

「おおイヤーマフ! オレ持ってないんスよね!」

深い青のタータンチェック柄のイヤーマフ。
なんとなく、涼太に似合う気がして。

「走る時とかも、ずれないようになってるの。この、カチューシャ部分は上じゃなくて後ろにするんだよ。折り畳めるし、いいかなって」

「嬉しいっス! ありがとう! 早速着けて帰ってもいいっスか?」

「うん、使ってくれるなら嬉しい」

「似合う? 似合う?」

キレイな髪に青色が映えてカッコいい。

「すごく素敵」

「……みわも、こんなに冷えてるじゃねえスか。自分の分はないの?」

涼太が耳に触れて、心臓がまた跳ねた。

「……ある、んだけど」

う、そうくるか。

「持ってきてないんスか?」

「……持ってきてる」

しまった。こういう流れになるなんて。

「なんで使わないんスか?」

「……恥ずかしくて……」

ひとりの時にこっそり使おうと思ってたのに。


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