第52章 大晦日の出会い
「ありがとうございましたー!」
お店の外に出ると、外は一層寒さを増していた。
折角温まった身体が、すぐに冷えていくのが分かる。
「寒いっスね」
右手が涼太の左側のポケットに誘導されて、またポケットの中で手を繋いだ。
「どっかブラブラしてから帰る?」
「うん、少しだけお散歩したい」
恥ずかしくて火照った頬にはこのくらいの寒さがちょうどいい。
駅まで少し遠回りして街を歩いていると、ちらりと白い粒が目の前を舞った。
「あ、雪だ!」
「うわホントっスね、寒いと思ったら」
ちらちらと舞い降りる雪は幻想的で、妖精さんたちが私たちの周りを飛び回っているようだった。
「……綺麗」
落ちては溶けて消える雪が少し寂しくて。
暫くの間、ふたりで空を見てた。
「ひえー、寒くて耳がちぎれそうっス」
「涼太……あのね、これ」
そっと手を離してからカバンから小さな包みを出して、涼太に手渡す。
「うん? なんスか?」
「あの、遅くなっちゃったんだけど、クリスマスプレゼント。良ければ使って」
「うわ、マジっスか! 開けていい?」
「大したものじゃないよ」
ガサガサと袋を開けている姿はまるで、サンタさんからのプレゼントを確かめる子どもみたいで、あどけなくて可愛い。
「おおイヤーマフ! オレ持ってないんスよね!」
深い青のタータンチェック柄のイヤーマフ。
なんとなく、涼太に似合う気がして。
「走る時とかも、ずれないようになってるの。この、カチューシャ部分は上じゃなくて後ろにするんだよ。折り畳めるし、いいかなって」
「嬉しいっス! ありがとう! 早速着けて帰ってもいいっスか?」
「うん、使ってくれるなら嬉しい」
「似合う? 似合う?」
キレイな髪に青色が映えてカッコいい。
「すごく素敵」
「……みわも、こんなに冷えてるじゃねえスか。自分の分はないの?」
涼太が耳に触れて、心臓がまた跳ねた。
「……ある、んだけど」
う、そうくるか。
「持ってきてないんスか?」
「……持ってきてる」
しまった。こういう流れになるなんて。
「なんで使わないんスか?」
「……恥ずかしくて……」
ひとりの時にこっそり使おうと思ってたのに。