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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第52章 大晦日の出会い


結局降りたのは、先ほど途中下車した駅のような、住宅街ばかりの駅だった。

閑散としたホームを抜け改札を出ると、駅前にはコンビニ、牛丼屋、携帯ショップ。

人通りはほぼない。

駅前にも関わらずタクシーも殆どいないのは大晦日だからか、はたまたここでは集客は見込めないとされているのか。

「……こんな駅だったんだね、意外」

「知らないとまず来ないっスよね。隠れ家的名店らしいっスよ」

涼太のポケットに入っている手だけが温かい。

寒風に曝されている鼻も耳も、凍って落ちてしまいそうなほど冷えている。

涼太に先ほどまでの様子はないけれど、ふたりの間に距離があるような気がして、意識して寄り添って歩いた。

マンションの群れを抜け、人気のない公園を横目に通り過ぎると、一軒家が建ち並ぶ住宅街の一角に行列が出来ていた。

「げ、すごいヒト」

「……このお店?」

「そそ。流石に年越し蕎麦をって考えてる人は多いみたいっスね……みわ、寒いしやめておく?」

「私は大丈夫。せっかく来たんだし、並ぼうよ! ふたりでお喋りしてたらすぐだよ、きっと」

私がそう言うと、にこりと優しく微笑んでポケットの中の手が強く握り直された。

「じゃあ、並ぼっか」

「うん!」

客側も長居はしないんだろう、列の長さの割には回転が速いようで、列の進みは思ったよりも早かった。

「このままだと、あんまり待たないで済みそうっスね」

「そうだね。……あれ?」

先ほどまでは周りをあまり見ていなくて気づかなかったけど、すこし前の方に人より頭ひとつ抜き出ている長身の男性が。

髪色は、夜道でもわかる美しい緑色だった。

「……あれ、緑間さんじゃない?」

「あ、ほんとだ。なんか喋ってるみたいだけど、相手は見えないっスね。恋人と来てんのかな」

「あんなに柔らかく笑うんだね。試合のときくらいしか会わないから……」

「……緑間っちも、変わったっスよ」

「……そっか」

帝光中学校時代の話は、実は黒子くんから聞いてしまっていた。

涼太も特にわざわざ触れては来ないし、ゆっくり、話してくれるのを待とう。

また暫くすると、緑間さんはお店の中へ誘導される。

暖簾をくぐって入る際、同じく笑顔の高尾さんの笑顔が目に入った。



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