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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第52章 大晦日の出会い


「……涼太、降りる駅まだ先だったよね?」

ここは小さな駅で、ホームは無人だ。
周りは住宅街らしく、ホームから見える街並みは、繁華街のそれとは大きく異なっていた。

「……ごめん、寒いのに。オレあのヒト苦手で」

珍しい、涼太がそういう事を言うの。
最初、まるで知らないひとかのように言ってたのに。

「知り合いなんだね。すごい」

「……前に何回か仕事が一緒になっただけっス。今はもう関係ねーし」

「……ふうん、そうなんだ」

こんなに拒絶するなんて、かえって不自然。
……どういう関係だったんだろう?

「……みわ」

「ん?」

「キスしていいスか」

「へっ? 今? ここで?」

ひとがいないとはいえ、ここは駅で、誰が見ているか分からなくて、えっと

「……ゴメン」

そう言って、冷えた唇が重なってきた。

「ン……」

唇は冷たいのに、絡む舌は温かい。
その感覚が非日常感を演出するのに一役買ってしまい、無意識にその舌と唇を受け入れてしまっていた。

「……ぁ」

涼太のキスは麻酔薬みたいだ。
触れたところから甘い痺れが訪れて、身体は自由がきかなくなる。

あっという間に溶かされて、足に力が入らなくなってしまう。

それが分かっているのかいないのか、キスの時に涼太は絶対私の腰に手を回してくれるんだ。

チュッと音を立てて、唇は離れた。

「も、もう……外なのに……!」

「……オレ、みわとのキスすげぇ好き……」

そう言って抱きしめられる。
温かく、柔らかい香りに包まれた。

「……ねえ、みわ。トロトロのお風呂、気持ち良かった?」

「……な、なんで今そんなこと、聞くの」

「別に。いやらしいみわを思い出してただけっスよ」

「ちょ、ちょっと!」

「はは、またやろーね」

「もー……」

電車が構内に入ってくるアナウンスが流れる。

ふと見上げた時に目に入った涼太の横顔は、少し強張っていた。


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