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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第52章 大晦日の出会い


結局ワガママを言って、日が落ちてからお蕎麦を食べに外に出た。

少しだけ電車に乗っての移動。
大晦日なのに、ひとが多いな。

涼太と電車に乗ると、いつも守るようにしてくれるのが好きで、安心する。

「みわ、手が冷たい」

そう言って、私の手を引いて涼太のコートのポケットに入れてしまう。

ポケットの中では涼太の温かい手が待っていて、優しく握ってくれた。

こころの中までぽわんと温かくなって、涼太の胸元にぽすんと頭を預ける。

ふと目を開けると、車両の端の方に見た事のある人物が目についた。

「……ねえ涼太、向こうのドアに立ってるひと……モデルのSariさん、じゃない?」

小さい顔に長い足。
お人形さんみたいだ。

「……そうっスか? みわ、よく知ってるスね」

「たまたまこの間買った雑誌で特集されてたから……綺麗なひと」

その雑誌も、デートの前に焦って買っただけで特に購読はしていないけれども。

「へえ。……みわは、いつも年末年始はどう過ごしてたんスか?」

あれ?
話逸らした?

「いつも、おばあちゃんとふたりでこたつでゴロゴロしてたよ。不健康だよね」

「あー、コタツいいっスね。うちにもコタツ買おうかな」

「リョウタ?」

綺麗なソプラノの、よく響く声。
色気のある、大人の声。

振り向くと、Sariさんが目の前にいた。

「……ども」

涼太が珍しく、暗い声で応対する。

「やっぱりリョウタだ! 久しぶり。元気してた? どこ行くの?」

「デートっス」

いつもと違う。無駄がなくて、有無を言わさない空気。

「え……ってことは、そちらが彼女さん?」

物凄い美人に覗き込まれて、恐縮しながらお辞儀を返した。

「へー……リョウタ、女の趣味変わったんだね」

……ヘボくてスミマセン……

「……」

「まあいいや、リョウタ、携帯変わったでしょ? 連絡ちょうだいよね〜新しい番号教えて!」

「……いや、オレはもう……」

歯切れの悪い返事だ。
どうしたんだろう。

その時、電車が次の駅に到着した。
ドアが開くと涼太は私の手を引き、電車を降りた。

「スミマセン、オレたちここで降りるんで!」

「えー! もう、リョウタってば。またね!」

絵になる笑顔を向けて、Sariさんの乗った電車はホームを去った。


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