第51章 おかえり
「ローション風呂、っていうんスかね。スライムじゃなくてごめんね」
肩を震わせながらそう言う涼太。
「もう、また笑って……馬鹿にしてるでしょう」
「してないっスよ、発想が可愛いなと思っただけで。……あ」
「ん?」
「大量のスライムに襲われるみわ! とか、AVちっくにやったら燃えそうっスね」
「……そんなの観てるの?」
あきが危惧しているように変な性癖の持ち主だったり……しないよね?
「いや! 観てない観てない、妄想っス。ほら、いいから入って!」
意を決して座ってみると……温かい……けれども、身体にヌルヌルが纏わりつく変な感じ。
体育座りをして、足をさすってみるとなんとも違和感のある触感だ。
「……これは、お肌にいいの?」
「うん、お肌にもいいみたいっスよ」
「"も"?」
も、という事はメインの効果は違うということか。
しかし、底が滑る滑る。
「これ、なんかすごく足元が滑るね。転んだりしたら危ない……」
「みわ、いつまでそんなトコにいるんスか」
「え」
今私達はバスタブのそれぞれ端と端にいる。
「だってこれじゃ……滑るから行けないよ」
「いいよ、じゃあオレが行くっスから」
こんなに底は滑るのに、涼太はなんてことない顔でこちらに向かってくる。
「滑らないでね!」
「まあちょっと滑るけど、別に問題なさそうっスよ。みわはすっ転びそう」
体幹の問題?
……今日はコメントが辛辣だね。
「ん、おいで」
「きゃ……!」
涼太が私の腕を掴んで引き寄せた。
途端に足元が滑ってよろけ、涼太の胸元に手をついてしまう。
「あはは、大丈夫っスか?」
「もう……あぶな」
涼太が笑いながら私の背中を撫でた。
ぬるりとした感触に、背筋が震える。
「あッ……!?」
「あ、いい声」
……なにこれ。
混乱しているうちに、涼太の手が背中から腰、お尻とどんどんまさぐってゆく。
手の感触がいつもと違って肌の上をぬるぬると滑っていき、触れたところから快感がはしる。
「やっ……あ、なんかヌルヌルして……っ」
「気持ちいい?」
脱力して涼太にもたれかかると、ふたりの身体の隙間を粘膜が埋め、まるで一体化したような錯覚に陥る。
抱き合ってその感覚を共有した。