第51章 おかえり
それからの時間は、ベッドに横になって、4月に出会ってからあんな事があった、こんな事があったとふたりで語り合った。
記憶がまるで空っぽだったはずが、みわの頭の中には、オレとの出来事がちゃんと記憶されていた。
いや、元に戻っていた、と表現すべきか。
「え、涼太……あの時そんな事考えてたの?」
「みわも、まさかそう思ってたとは全然思わなかったっスよ……」
そんな事をするのは初めてで、実はこの時こう思ってた、なんて話が聞けたりするとすごく新鮮で。
みわは本音を隠してしまうタイプっスからね。
……途中、色っぽい話になると我慢出来ず、何回かセックスしたりイチャイチャしたりになだれ込んでしまったけれど。
結果から言うと、記憶は全て完璧に戻ったというわけではなかった。
とりわけ、ヤツに関しての記憶は断片的になっているようだ。
記憶自体はあるが、細かい出来事までは覚えていないようだった。
ショックだった部分を本能で拒否してしまっているんだろうか。
しかし、敢えて詳しく補てんするようなことはしない。
嫌な記憶はそのまま忘れてしまっていても良かったくらいだから。
必要になった時に、話せばいいだろう。
ようやく昨日の話まで追い付くと、既に外は明るくなっている。
カーテンの隙間から差し込む光がみわの美しい瞳を照らして、彼女は少し眩しそうに眉を顰めた。
「……みわ」
「なあに?」
「……おかえり」
「……ただいま……」
強く、強く抱き合った。
少し乾いた唇にも、背中の傷跡にもキスを落とした。
そのままお互いの身体をまさぐりあい、みわは貫かれる快感に嬌声を上げ、オレは溢れんばかりの愛液の海に溺れた。
それは、大晦日の朝。