第8章 マネージャー
私は酷い運動音痴だけど、体力をつけるためにランニングをしていて、良かったと思う。
朝練から始まって、授業に午後練、家事に勉強。
更にマッサージ練習……かなりハード。
「神崎、昨日ほぐしてもらったトコ、すげえ楽だわ」
朝練で、笠松先輩の報告を聞いて本当に嬉しかった。
「ただ、オマエもあんまり無理しすぎるなよ。マネになったばかりで、毎日毎日遅くまで頑張ってんだからよ」
「はい! ありがとうございます!」
「おはよう。神崎、ちゃんと寝れてる?」
「あ、小堀先輩おはようございます! 大丈夫です!」
「無理しないようにね」
「はい!」
なんか、今日はよくこんな感じで声を掛けられる。
さっき森山先輩と早川先輩にも言われたし……。
「あ、みわっち、おはよ〜!」
「黄瀬くん、朝から元気だね、おはよ!」
「なんか顔色良くないっスね? 大丈夫?」
「え、黄瀬くんまで……そんなに私、疲れた顔してるかなあ。すっごく元気なんだけどな」
「無理は良くないっスよ。今日は朝練顔出さなくても良かったんじゃないっスか?」
「ううん、平気だよ! インターハイも近いし、気合い入れて行かないと!」
午後練のあとにマッサージできる許可が出たし、午後の作業が減るように、朝のうちから色々準備しておかなきゃ!
新しい事が出来るようになるって、本当に楽しいな。
私は、毎日楽しんでいた。
だから、気づいてなかったんだ……。
「みわ、アンタ大丈夫?」
「うっ、あきまで……?」
「ん? 何が? 相当言われてるよ、熱心な黄瀬信者に」
信者……黄瀬くんのファンの事だ。
バスケ部のマネージャーも始めちゃったし……。
「まあ、仕方ないよね……それだけ黄瀬くんのこと、好きなんだろうし」
「おお、彼女の余裕か」
「う、そういうんじゃないんだけど……」
机の中に手を入れると、小さな花柄の封筒のようなものが手に当たった。
「?」
"神崎 みわ 様
お話があります。今日の昼休み、
体育館裏に来ていただけませんか?"
……。
なんか一見、素敵なラブレターだけど……。
「わー、モロに果たし状って感じね」
「やっぱりそうだよね?」
はああぁ……
バスケ部の事だけ考えていたいなあ……。