第49章 ハロウィン
こんなに肌が恋しいのはみわが初めてで。
首筋についた赤いしるしが独占欲を僅かに満たす。
同時に、満たされない欲求が顔を出すけれども。
……だからこの2週間、密室でふたりきりにならないようにしてたのに。
誰か、オレを止めてくれよ……。
さっきから、みわは目を合わせない。
「みわ、オレの顔見てくんないんスか」
まだ怒ってるんスか……?
顔はずっと赤いままだ。
こうしていると、記憶を無くす前のみわと何も変わらない。
「……かっこよすぎて むり みれない」
ぼそっとか細い声でそう言うとさらに顔を赤くした。
なんなんスかそれ!?
……可愛いすぎんのはアンタなんスけどね!?
「……ね、ほんと、もどろ」
会話を遮るようにコンコン、とドアをノックする音。
「オイ黄瀬、皿が」
「はい笠松先輩、今行きますっ」
笠松センパイの問いに答えるように、みわは腕が緩んだ隙にするりと抜けて行ってしまう。
「なんだ、神崎もいたのか」
「すみませんトイレに行ってて。お皿ですか?」
ふたりの声が遠ざかる。
……たった今まで腕の中にいたのに。
大きなため息をついてから、気を取り直して、オレもリビングに戻った。
「……思ったんスけど森山センパイ、これって仮装してるだけで、ハロウィンらしさなんにもないっスよね?」
「何言ってんだ。仮装が何よりもハロウィンらしいじゃないか」
「……そーなんスけどね……」
結局その後は皆で軽食を取り、カードゲームなどをして健全に過ごした。
罰ゲームはその度にアホな事ばかりやってた。
皆で、散々笑った。
みわの首筋についた跡については、誰も触れなかった。
みわとの距離が少しずつ縮んでいるような気もしているが、……やはり、記憶が戻って欲しいと願ってしまうのが本心。
また、愛し合いたい。
無理かもしれないと分かっていても。
しかし早くも11月、来月下旬にはウィンターカップ開幕だ。