第49章 ハロウィン
部屋に入るなり、熱い唇が重なる。
ドアに寄りかかる背中には黄瀬くんの腕が巻きついていて、傷がドアに触れないようにされていた。
「ん、んん」
恥ずかしい。
自分から求めてしまった。
整理がつかなかった頭は、さらに真っ白になる。
熱い。
でも、この熱を感じている間、先程から自分を惑わせるモヤモヤは感じなくなっていた。
「っは、ん」
「ふ……キバ、邪魔っスか?」
もう、そんな余裕はない。
キスはどんどん濃厚になってゆく。
舌が絡め取られ、足の先まで快感が走り抜ける。
「……キスするぞって……ちょっと嫌がらせ的な意味で使ったんスけど……」
「……は、ぁっ……」
「みわ、妬いてくれたんスか? ヤキモチ」
そう言われ、頭の中がカーッと熱くなるのを感じる。
ヤキモチ? これは、ただの嫉妬?
「イズセンパイの事は女としては見てないっスよ。ただのセンパイマネ。でも、ごめんね」
恥ずかしすぎて目をそらす。
子どもみたいに嫉妬して、勝手にふてくされていた。
それを、黄瀬くんは分かってたんだ。
多分、小堀先輩も。
「みわ、ねえ、妬いた?」
恥ずかしい、恥ずかしい!
「……すこし、だけ」
「不謹慎っスけど……妬いてくれたの、嬉しかった」
「え?」
うれし……かった?
こんなにみっともないのに?
「嬉しかったんスよ、オレはみわのモノだって、思ってくれたんスよね?」
「そ、そういう、わけじゃ」
「オレはみわだけのモノっスよ」
優しい抱擁に、また身体がジンジンと疼いてくる。
「も、もう戻らなきゃ」
「折角可愛いカッコしてるのに」
「や、ちょっと離して」
逞しい腕は、解放してくれない。
「Trick or Treat」
耳元で囁かれた声は、微かに濡れていて。
「えっ、お、お菓子はリビングに」
「だぁめ」
舌が、下唇をさらりと撫で首筋へと這わされる。
「ぁ」
ちゅ、という音と共に首元に微かな痛み。
「……ホントに血、吸えたらいいのに」
恥ずかしさと肌が触れている事への快感が入り混じる。
「や、ぁ」
「そんな可愛い声で誘わないでよ」
触れる舌が、指が、なぜこんなに快感をもたらすのか。
自分の身体なのに、自由がきかない。