第8章 マネージャー
あれー、みわっち、いない……
「ああ、みわちゃんなら、今日は先に帰ってて欲しいって言ってたぞ」
3年の森山センパイはそう伝言してくれたけど、もう遅いし、送っていかないと危険だ。
部室に戻ったのかなとも思ったけど、いない。
部室棟を歩いていると、ある部屋から声が聞こえた。
処置室。
なんだったっけこの部屋……
ああ、ケガした時とかに使うための簡易ベッドがあるって言ってたっスかね。
まだ残ってる部があったのか。
特に気にも留めず、前を通りかかった時。
「うっ……神崎……そこ……、っ」
「……ここ、ですか?」
「あっ……おう……」
笠松センパイと、みわっちの声だ。
「……気持ちいいですか……?」
「ウッ……んー……」
荒く乱れる笠松センパイと、余裕のみわっち!?
まさかの神崎 × 笠松!?
「な、何してんスかあああああ!」
思わず飛び入ると、ベッドの上で半裸になっている笠松センパイと、上に跨っているみわっちの姿が。
マジで!?
「せ、センパイ、お、オレの彼女なんスけど!?」
「黄瀬おま、何言ってんだ……」
「あ、黄瀬くん、おつかれさまぁ」
「うっみわっち、マネージャーになって随分明るくなって……じゃなくて! 何してんスか! 浮気っスか!」
「えっ、ちょっとマッサージの練習台になってもらってて……」
「ええー! なんでオレに言ってくれないんスかー!?」
「神崎、サンキュな。明日の経過見て、問題なければ無理ない程度に他のメンバーの様子も見てやって欲しい。……黄瀬ちょっと来い」
「ちょ、センパイ!? みわっち、送るから待っててね!」
笠松センパイに引きずられ、部室に入ったオレ達。
「……今回の件は、神崎が言い出したわけじゃないからな。俺が、俺を練習台にしろって言っただけだから。勘違いして彼女を責めんなよ」
「センパイ、女苦手なのに……ハッまさか、みわっちのこと!」
「アホか。あの一所懸命さを買ってるんだろが。皆の役に立ちたいけれど、かえって迷惑になるのが怖いんだろうよ」
「みわっち……」
「ほら、待たせてねーで行けよ」
「あ、ありがとうござい……マス……」