第49章 ハロウィン
イズセンパイは、外見こそ小柄で可愛らしいが、男気溢れるタイプだ。
キャーキャー言ったりとか、媚びたりもしない。
特に女子と意識してもいない相手で気楽だ。
いいや、さっさと終わらせてしまおう。
「あー……んじゃ、失礼するっス……」
「さあおいで黄瀬」
なんとも言えない気持ちで小悪魔センパイに誘導され膝に頭をつけると、目の前で森山センパイが悔しがっているのがよく見える。
もういいだろうと頭を上げようとしたら、突然センパイが前かがみになってオレの耳元に顔を寄せてきた。
「黄瀬ってなんか女子みたいにいいニオイすんね?」
クンクンと鼻を近づけて嗅がれている。
イヌっスか、センパイ?
「そうスか? 特に何もしてないっスけど……」
ハッと気づけば、センパイが前かがみになったお陰で、豊満なバストがオレの肩の上に乗っている。
柔らかい、水風船のような感じ。
まあオレも男だし、悪い気はしないけど……
みわとはまた違う感触だなと特に感情もなく考えていると、奥に座っているみわが目に入った。
みわは、下を向いていた。
オレの視線に気づくと、パッと席を立ってリビングから出て行ってしまう。
しまった。
オレがセンパイの事を女性として意識してないからといって、流石にこれは無神経だった。
周りのセンパイ達も、イズセンパイの人柄は知っているから誰もそういう意味では心配していなかったんだろう。
フォローしに立ち上がろうとすると、早川センパイと中村センパイに身体を押さえつけられる。
「よしお前らそのまま押さえておけ! イズも目線こっち! ハイチーズ」
森山センパイのスマホに撮影されていると、小堀センパイが席を立って出て行ってしまった。
「んじゃーそろそろゲームも終わりにしてメシにするか! あれ? 小堀は?」
森山センパイが笠松センパイに聞いた。
「ん、トイレだってよ」
違う。みわを追って行ったんだ。
「オレもトイレ行ってくるっス!」
「お前んちトイレ、ひとつだろ……小堀が帰ってきてから行けよ……」
笠松センパイはそう言ったが、構わずオレは廊下へ出た。