第49章 ハロウィン
ふたりでオレの部屋に入る。
「な、なんスかこの格好!」
「だ、だってあきがこれ着ろって!」
「こ、これ、これじゃ下着じゃねぇスか!」
もう勢いだけで会話するオレたち。
「ワンピースだよ! ほら、ここが透けてるだけでちゃんと……」
あー、分かってない。
ホント、分かってない。
黒いレースの間と、太腿それぞれに指を滑らせる。
「あッ、ちょっと……」
「……ほらここ、すぐ脱がせられる。誘ってんの? なんでこんなの着るんスか?」
「だっ、だって……これ着たら黄瀬くんが喜ぶって……あきが……」
「……」
「……」
オレのためにと聞いたら、言おうとしてた文句もどこかに行っちゃうじゃないスか。
「いや、確かに、ちょう可愛いけど、こんなカッコ、他の男に見せたくねえっス」
「……ごめんなさい……着替えるね」
「いやでも、パーティーを台無しにしたいわけじゃないんスよ……マントでうまいこと隠しながら過ごして貰えないっスか?」
みわも楽しみにしていた集まりだから自分のワガママを押し付けたくなかった。
いや、押し付けてるけど。
「うん……わかった」
あー、あきサン勘弁して。
オレ長期おあずけ中なんスよ……
「皆が変に思っちゃうから、私戻るね」
ぱたぱたと部屋を出て行くみわ。
はぁ……地獄っスわ……。
「おっ黄瀬帰ってきた。ゲームやろうぜ!」
「何やるんスか?」
「ハロウィンらしくダック・アップルでもやるか!」
「ちょ、室内じゃ無理っスよ!」
「森山、ダック・アップルってなんだ?」
「笠松やったことねーの? 水に浮かべたリンゴを、口で取るゲームだよ」
森山センパイ……女のコ達のカッコ見てます……?
そんな事したら、谷間が丸見えじゃねっスか。
「リンゴ買ってきてねえし、聞いただけでも水浸しになりそうじゃねえか」
笠松センパイのもっともな意見に、流石の森山センパイも諦めたようだ。
「むう、そうだな……じゃあここは王様ゲームにしておくか!」
「な、なんでそうなるんスか森山センパイ!?」
「いや、下準備に時間もかからないし可愛い女子がふたりもいるんだから、この流れは当然だろう!」
森山センパイの嬉しそうな声に、今日はまだまだ苦労しそうだということが容易に想像ついた。