第48章 弱音
「みわ、オレ明日は苦手なのばっかりなんスよ〜」
「あ、そっか……暗記モノが多いよね」
オレの頭はそんなに容量多くない。
「みわ、ヤマかけたりしてるんスか? 今まで聞いたことなかったけど、みわってどうやって勉強してんの?」
「んー……私は自分流だからなあ……赤い下敷き好きなんだよね、古いかもだけど」
「ああ、上から当てると見えなくなるってやつっスよね。みわ、ノート見せて」
みわが渡してくれたノートは、全てオレンジ色のペンで文字が書いてあった。
「オレンジ?」
「赤で書くと色によってはうっすら見えちゃったりするし、ちょっと色が強くて目が疲れちゃって……。このオレンジ、優しくて好きなんだ」
「そうなんスね。……ところでみわ、これだと、赤い下敷き乗せたら全部見えなくなっちゃうんスけど」
普通、見せたいところは黒にするんじゃないスか?
「うん、それで隠して、見えないようにするんだ」
うん。
……へ?
「えと、悪いんだけどみわ、このページを試しに勉強してみて」
「いいよ。隣に真っさらなノートを準備して……このページには何が書いてあったっけ、って思い出しながら……」
そう言ってみわは、何も見ずに隣のノートに文字を書き出す。
明日は歴史のテストだ。
年号、事件、人の名前、法律?
なんか色々な単語でノートが埋め尽くされる。
「ん、これで1ページ分だから、終わったら下敷き外して答え合わせ」
みわが下敷きを外すと、オレンジの文字と今書いた文字が殆ど同じ形で並んでいる。
待て。
「ちょっと待って、全部覚えてる?」
「……あ……うん、私、ヤマかけたりとか苦手で……だったら全部覚えちゃった方が確実かなって思ったんだ」
「……マジ、スか」
「不器用なんだ。覚えることくらいしか特技がなくて。……それなのに、大事な事は忘れちゃうし、ほんとばか……」
なんか色々規定外のことを言われて混乱する。
いや、オレのバスケももしかしたら見る人によっちゃ規定外かもしんないスけど…
「……こんなみわが記憶喪失って、改めて、スゲーヤバい事なんだと認識したっス」
オレたち、変人カップル?