第48章 弱音
させて、って……みわ、意味分かって言ってるんスか。
みわは、さっきのオレの情けない寝言も全部聞いてしまったのだろうか?
だから、気にしてしまっているのか。
「みわ、変な寝言で気にさせたなら謝る。本当に、大丈夫っス」
「……や、する」
「ダメ。ダメ」
「なんで!」
「なんでも!」
……子どものケンカか。
「……もし今後、みわの記憶が戻るような事になればお願いすることにするっス。今は無理するだけだから」
そんなお願いしないけど。記憶が戻っても。
「無理なんかしてない、してないのに!」
ああ、記憶がなくても頑固なみわはみわのままだった……
「みわが気にするようなこと、何にもないっスよ」
「だって……私が忘れてなかったら、こんな風になってなかった……」
「いや、みわの記憶の欠除は、そもそもオレのせいだから」
「いいの! ……させて、ほしい」
……水かけ論、って言うんだっけ?
みわって、セックス中オレの声に弱いんだなって嬉しくなったことがあったけど、オレにとってのみわの声は、常に誘惑されるように甘く響く。
「……上手くできないかもしれないけど、教えてくれれば頑張るから……」
「頑張る必要ないってば!」
「……私じゃ、ダメ?」
「いや、だからそうじゃなくて、そういうのは身体に負担になるって」
このままじゃ日が暮れても夜が明けても同じ問答になりそうだ。
「……私、何かしたいの……!」
「ああもう、分かんないコっスね!」
「……ごめんなさい。でも、引き下がりたくないの」
「どうして……」
「どうしても。私が、何かしてあげたい」
「さっきみわからキスして貰ったっスよ。じゃあ、抱きしめてくれる?」
「うん……」
みわのふわんとした肌に包まれる。
ああ、気持ちいい。
胸に顔をすり寄せた。
寂しさが、温かさで埋められていくようで。
でも、同じ量の寂しさが胸の中に生まれる。
満たされない気持ちは、残酷なまでにココロを支配していた。
醜い肉欲とともに。
……でも今だけは。
このみわの匂い。
このまま、何も考えずに眠ってしまいたい。
「……あったかいっス」
「……うん……」