第48章 弱音
『みわ、寂しい……
オレを、愛して……』
聞いてしまった、黄瀬くんの本音。
胸が締め付けられるように、苦しい。
また、私は彼の胸の中にいる。
優しく包んでくれているこのひとを、今度は私が包んであげたい。
今まで知らなかった、愛しいと思う気持ち。
どうやって伝えればいいの。
……最後まで、すればいい……?
「みわ、服着て。ごめん」
黄瀬くんは謝ってばかりだ。
「黄瀬くん、怖いんじゃないの。違う。私……黄瀬くんに……してあげたい。こんな風に思うのは、へん……?」
少しの沈黙、はあというため息。
「……記憶がなくなる前も、そうやってオレを慰めてくれた事があったけど……」
……慰めるって、つまり、その、
……えっちなことを、したって……事だよね。
「……する?」
「みわ、身体のこと、考えて。もしするとしても、ちゃんと治ってから。その時にみわがオレと本当にしたくなってくれてたなら、しよう」
あくまで冷静な返答だった。
先ほどの弱音は、記憶にないのだろうか。
さっき、昼寝をするためにベッドに入った黄瀬くんに、ついまたキスをしてしまった。
すると、彼からの熱い抱擁とともに、キスをしたまま服を脱がされた。
手つきは確かに少し悪かったけど、絶対に起きているものと思ったくらい、黄瀬くんの愛撫は熱くて熱くて。
舌が触れたところから、どろりと溶けてしまいそうな感覚。
身体に触れられ乳房を愛撫されると、感じた事のない快感が身体中を纏い、まだ入れられた記憶のない中心がひどく疼いた。
このひとに何か、できること。
「……私にできること、ない?」
……口で奉仕なら、させられた事がある。
嫌な記憶、だけど……
黄瀬くんは、喜んでくれるだろうか?
でも、また勘違いの空回りかも……
アイツにされた事やさせられた事しか知らないのが、恥ずかしい。
でも、何か。何かを、してあげたい。
このひとに、何かを。
気持ちばかりが焦る。
焦りばかりが先行して、黄瀬くんの下半身を撫でた。
部屋着越しでも分かるほどそこは硬く、膨張している。
「ちょ、みわっ」
「私に、させて」
何を、というのは分かっていない。
でも、この気持ちを、届けたくて。
この名前のわからない気持ちを、伝えたい。