第48章 弱音
頬にやや冷たい感触を受け、オレの意識は覚醒した。
ああ、夢は終わってしまったのか。
情けない終わり方だったな。
うっすらと目を開けると、オレを覗き込んでるみわが涙を流している。
彼女の涙がオレの頬を濡らしていた。
また、泣かせてしまった?
「……みわ……どうしたの……」
オレの隣で横になっていたみたいだけど、一緒に昼寝をしていたんだろうか……
腰に手を当ててこちらにみわの身体を引き寄せようとすると、思っていた感触と違う事に気づく。
みわは、何も身につけていなかった。
「……みわ!?」
彼女の胸元には、赤いしるしがついている。
先程、オレが夢でつけたのと同じ位置に。
え……
まさか……
「ご、ごめん! オレ、寝ぼけて」
寝ぼけて、何をした? 何を言った?
どこからどこまでが、夢だった?
もしかして、最初から夢じゃなかった?
いやいやいや。
……全く自信がない。
夢と思って疑ってなかった。
どちらにしろ、みわを怖がらせて泣かせてしまったのか。
最悪だ……。
「……黄瀬くん……」
「ごめん、みわ。夢だと思って……」
必死で謝ろうとしたオレの唇が潤った唇で塞がれた。
「ん」
唇の隙間から、申し訳なさそうに舌が滑り込んでくる。
「んん」
ヤバい。
夢か現実かハッキリしねぇけど、さっきまであんなんだったから、理性が吹っ飛びかけてる。
みわの舌が、オレの中を探っている。
遠慮がちに擦られるのが、気持ちいい。
「っは」
唇が離されると、みわはオレの首筋にキスを落とした。
「みわ待って、オレが寝ぼけてなんか言ってたかもだけど気にしないで!」
先日のように、また身体を差し出すべきと思ってしまったのだろうか。
みわの肩を掴んで、無理矢理剥がした。
「身体に負担かかっちゃうから、やめて……ごめん。本当にごめん。夢と現実の区別がついてなかったんス」
みわはずっと泣いている。
胸が痛くなり、抱きしめると肩が震えた。
「ごめん、怖がらせてごめん……」
みわが胸の中で首を横に振っている。
「黄瀬くん……ごめんなさい……」
なんで。なんでみわが謝るんスか。