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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第48章 弱音


マンションに着いて玄関のドアを開けると、みわを先に通す。

「お邪魔しま〜……た、ただいま? お邪魔します?」

また不思議なところに拘っているようだ。

「お好きな方でいいっスよ」

「……お邪魔します」

「いらっしゃい」

おかえり、って言えるようになりたい。
でも、待つって言ったのはオレだ。

「ちょっと着替えちゃってもいい? みわも部屋着あるんだし、着たら?」

「そうだね、楽な格好にさせてもらおかな」

お互いの部屋に入っていく。

ほんの1週間前とはガラリと状況が変わってしまった。

……考えないようにしよう。
どうにもならないことはどうにもならないんスから。

着替えてリビングに入ると、キッチンにみわの姿があった。

お茶を淹れてくれている。

いつもと一緒だ。
帰ったらまずお茶を淹れてくれるんスよね。

「あ、ごめんね。勝手に触って」

「ううん、嬉しいっス」

みわの祖母から貰ったという急須を使って淹れてくれる緑茶は、とても美味い。

彼女のお気に入りの茶葉はいくつかストックも買ってある。

キッチンの気配を心地よく感じながら、ダイニングテーブルに座って教科書を開いた。

「……来週末にはウィンターカップの通常枠予選だね」

コトリ、置かれたカップから緑茶のいい香り。

「そっスねー……あっという間だったな」

「こんな大事な時期に……ごめんなさい」

「ねえ、本当にさ、今回の件はみわのせいじゃないっしょ。むしろ、オレのせいなんだからもう謝んのやめにしない?」

「あ……うん、ごめん……」

「早く治るといいんスけど」

お茶に口をつけると、熱すぎずぬるくない温度で飲みやすかった。

温かいお茶を口にすると、忘れていた眠気が顔を出す。

一旦思い出してしまうと、もう抗えない。
目が開かない。

まだノートすら開いていないのに頭がぐらぐらしているのが分かる。

「……黄瀬くん、少しお昼寝したら?」

これはダメだ。
眠すぎる。

「……ごめん、30分だけ」

フラフラとソファに向かうと、腕を掴まれて制止された。

「だめだめ! 身体痛くなっちゃうよ」

……以前も同じことがあった。
ずるずると寝室に引きずられていく。

ベッドに横になった瞬間、身体の力が抜けていった。

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