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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第47章 距離


あんなに色々な事があったのに、定期テストというものは予定通りくるもので。

隣の席にみわが座っているのを見て心底ホッとする。

ホームルームが終わると、1時間目から早速テストだ。
ああ、憂鬱。

隣のみわがふうと息をついた。

ちらりと様子を伺うと、完全に集中していて、声もかけられない。

あの目、好きなんスよね。

真っ直ぐで、強くて絶対に折れない。
誰にでも出来るものじゃない。

オレも、バスケ中にあの感覚になるから分かる。

……勉強も、あれくらい集中できたらいいんスけど……。

なんだかんだテストと戦い、4時間目が終わる頃には使い慣れない脳みそが悲鳴をあげていた。

テスト期間中は午前だけの時間割だ。

「やっと帰れるっス……」

バスケやってるよりも、普段使ってない所が疲れている。

帰りたい。
今すぐ昼寝したい。

「お疲れ様、黄瀬くん。夕方までお邪魔してもいい?」

「モチロン!」

その笑顔に心から癒される。
お昼寝欲は吹き飛んだ。

帰り道、校門の前では、つい手に力が入る。

犯人の女は結局釈放されたらしい。

女の父親が財界人らしく、簡単に言えば揉み消したのだ。

道理で、20歳だか30歳だかの女性が平日からウロウロしてるわけだよ。

お陰でみわがワイドショーの標的になることはないが、あれだけやられて無罪放免とは、みわが傷付き損じゃないか。

背中から切り裂いてはらわたを引きずり出してやりたい。

二度と消えない傷を負えばいい。

殺してやりたい。

「黄瀬くん? どしたの?」

声を掛けられて、ハッと現実に戻される。

「大丈夫? 行こう!」

真っ黒になっていた気持ちが、その笑顔で浄化されるようで。

「みわ」

「うん? ……っ?!」

半ば本能的に、柔らかい唇に口付けをした。
鼻先をくすぐる、甘い香りにくらくらする。

「ん……」

恥ずかしそうに応じてくれるのが堪らない。


「黄瀬! そういうのは人のいねぇとこでやりやがれ! シバくぞ!」

少し遠くから、笠松センパイの声。

顔を上げると……道行く生徒達がオレたちふたりに釘付けになっていた。

欲張ってもう少しだけみわの唇を堪能していたら、センパイの蹴りが飛んできたのは、言うまでもない。



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