第47章 距離
日曜日は家で勉強をしながらゆっくりと過ごして。
心配したけど、夢も見ずに月曜の朝を迎える事が出来た。
起き上がると、既におばあちゃんは隣にいない。
お魚の焼ける匂い。
朝食の準備をしてくれているようだ。
居間には寄らず、台所に顔を出す。
「おばあちゃん、おはよう」
「あ、おはようみわ。眠れた?」
「うん、寝れた」
「着替えていらっしゃい、お手伝いしなくていいから」
「いいの?」
「お待たせしたら悪いでしょ」
?
「じゃあ、先に準備してくるね」
洗面所で顔を洗い、パジャマを脱いで制服に着替えた。
あ、思えばブラウス1枚、救急車での処置の時に切り裂かれてダメになったって言われたな……うう、制服って高いのに……。
再び台所に顔を出すと、既に朝食は作り終えてしまったようだ。
「おばあちゃん、遅くなってごめんね。おみそ汁よそえばいい?」
「うん、そこにお椀出してあるから」
居間からおばあちゃんの声がした。
「はーい」
豆腐とわかめ、ネギの入ったおみそ汁を器に入れようとすると、お椀が3つある事に気付く。
慌てていたのかと、とりあえず2つに注ぐ。
鍋からの湯気が頬を撫でたのをきっかけに、なぜかふと、昨日のキスを思い出す。
柔らかくて、温かい。
もっと深く、深くまで入ってきてほしいと思うのは、変だろうか。
顔が少し赤くなりそうだったので、慌てて思考を切り替え、居間へと足を踏み入れた。
「!?」
「あ、みわ、おはよ」
突然視界に入ってきた彼黄瀬くんの姿に、思わずおみそ汁を落としそうになる。
「わっ、あぶねっ」
それを彼が見事にキャッチしてくれた。
「セーフっスね」
「え、え、あれ、どうして」
「黄瀬さんが迎えに来てくれたから、朝ご飯まだならどうぞって、ばあちゃんが誘っちゃった」
「い、言ってよ……!」
危うく、だらしないパジャマ姿を披露するところだった。
黄瀬くんには驚かされっぱなしだ。
一体、何時に家を出てきたの。
突然の黄瀬くんの登場に、心臓がうるさい。
目が合うと、にこりと微笑んでくれる。
学校でファンの子に向ける笑顔じゃない。
もっと、ぽかぽかあったかくなるようなそんな笑顔だ。