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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第47章 距離


「黄瀬くんだって、記憶のない私とじゃ……嫌、でしょう?」

絶対、記憶がなくなる前の私と重ねているはず。

「みわこそ、いきなりオレが彼氏とか言われて、嫌じゃないんスか?」

……え……?
そう言えば、最初に聞いた時、戸惑いはしたけど……。

「誤解を招きたくないからハッキリ言うけど、オレはみわと今まで通り一緒にいたいし、なんでもしたいっスよ。
記憶があろうがなかろうが、みわには変わりないっスから」

私には……変わりない?

「そりゃ、なんの記憶もなくなっちゃった、ってのに……思う所はあるっスけど、それは本当」

……。
なんか、混乱して完全に色々見失ってた……。

私が私でなくなってしまったように思ってた。
でも、違うんだ。
私は、私なんだ。

「ありがとう……。私、焦ってた」

また、頭を撫でてくれる。
これ、好きだ。

「眠れそう?」

「……がんばる」

「頑張らなくていいんスよ。寝よう寝ようとすると寝れないっスから。寝れなかったら、メールでも電話でもして」

優しい。
こんなに優しくされたことないから、どうしたらいいか分かんない。

「……ありがとう」

「みわ、おやすみのキスしていい?」

「……」

「だめ?」

「…………いい、よ」

「嫌なら無理しないで欲しいんスけど」

「……淫乱だって思わない?」

「へ」

「……お、覚えてない、くせに……そういうの、するとか……変態って……」

黄瀬くんが肩を思いっきり震わせてる。
すんごい笑ってる!

「わ、笑いごとじゃないんですけどっ!」

「ゴメンゴメン。可愛すぎてつい」

「……うう……」

「みわ」

「あ」

チュッ、と軽く啄むように少し冷えた唇が重なった。
それでも、私よりも温かい。

「遅くまでごめんね。おやすみ」

「き、気をつけてね……! おやすみなさい!!」

軽やかに走り去っていく彼の背を見送って、庭へ戻る。

おばあちゃんは起きていないようだ。
そろりそろりと布団へ戻った。

布団に入っても、やはり暫くは寝付けない。
胸がドキドキして、落ち着かない。

でも、纏わり付いていた恐怖は薄れ、そのドキドキは非常に心地よいもので。

しばらくすると、嘘みたいにゆるやかに眠りへ吸い込まれていった。



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