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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第47章 距離


「オレの前では素直なみわでいてよ」

頭の上から降ってくる言葉が甘くて、甘くて、優しくて、胸の詰まりがほどけて溶けそうだ。

そう言った後は、何も言わずに
ただただ抱きしめてくれていた。

「ごめんね黄瀬くん……忙しいのにわざわざ」

「こんな時にそんなコト言わないでよ」

「……黄瀬くん、補習になったらどうしよう」

黄瀬くんの笑い声と一緒に、大きな胸が揺れた。

「大丈夫っスよ、ちゃんと勉強もしてるし。みわにも散々教えて貰ったから今回は自信アリ」

黄瀬くんに勉強を教えたというのは朧げに記憶がある。

前回のテストの時は補習を免れて先輩方と喜んだり。

「ふふっ、教え甲斐のある生徒なんだね」

ただ、いつどこで誰とどうやって勉強した、というのは思い出せないけれど……。

この穴のある記憶が気持ち悪い。
痛む頭にイライラする。

「みわこそ、テスト大丈夫なんスか」

「うん、忘れてないと思うから大丈夫」

一度覚えたら忘れないのが特技だったのに。

黄瀬くんとのことだけ、こんなにぽっかり記憶がなくなるなんて、酷すぎる。

「流石。言ってみたいっスね、そのセリフ」

「その代わりスポーツはてんでダメだもん。足遅いし」

「でも、いざって時はピューッて動けるんだって、言ってたっスよ?」

「……なあに、それ……我ながら頭悪そうな発言……」

「……もう、絶対あんな無理しないで。みわは覚えてないみたいだけど、自分を犠牲にするようなこと、絶対しないで欲しいんス」

身体に回された腕に力が入る。
すこしだけ、苦しい。

「う、うん……」

「……ごめん、力入れすぎた」

「黄瀬くん……私、記憶戻したい。絶対に、戻したいの。そのためならなんでもするから、何か気づいたらすぐに言って」

「うん、リョーカイっス。でも……みわ、記憶戻ってないのに、無理して……してくれること、ないっスからね」

「何を?」

「キス、とかさ」

途端に頬が赤くなるのが分かる。

「やっぱり……記憶がないのにするのは、変、だよね」

だって、嫌じゃなかったんだ。
唇を重ねた瞬間、こころの奥で何かが動いた。

私はキスをした記憶なんてなかったのに、身体は……覚えていたみたいに。

「私……早く元の私に戻りたい」



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