第7章 キス
眠れない。
目が冴えて眠れない。
さっきまでこの部屋にあった熱が、まだ引いていない。
顔が、これ以上ないくらい熱い……。
ついさっきまで、そこで黄瀬くんに抱き締められて、キスして……。
信じられない。信じられない。
一体私の人生に何が起こっちゃってるのか。
今まで、近くに居ることすら苦痛だった男性。
できるだけ視界に入らないようにと生活してきた。
恐怖の対象でしかなかったのに。
でも、黄瀬くんの腕の中にいる時は、嫌なことも、怖いことも、ぜーんぶ忘れて、ただただ安心していた。
あの熱に、全部委ねられた……。
黄瀬くんは、本当にすごい。
格好良くて、バスケが上手くて、モデルさんもしてて、優しくて。
なんでも出来るのに努力家で、真面目。
たまにする、寂しそうな表情が気になるけれど……あれは、なんなんだろう。
あんな凄い人と私、本当に交際、するの……?
私も、見習って自分磨き、しないと……とても彼の横に並べるとは思えない。
……そういえば、「付き合う」って、何すればいいんだろう?
…………
考えたけど、よくわからなかった。
あまりに情報が少なすぎる。
今は、バスケ部のマネージャー目指して、バスケの勉強頑張ろう。
今できる事を、とにかく頑張ろう。
学校の勉強だって、頑張らなきゃ。
成績を下げるわけにはいかないし……
やる事は、沢山ある。
やりたい事も、やらなければならない事も。
こんな私でも、少しでも海常バスケ部のお手伝いが出来るようになればいいな……。