第46章 自宅
「あ、おばあちゃんち、ここ」
みわは、駅から暫く歩いた住宅地の中にある、古くから建っているであろう一軒家を指してそう言った。
かなり年季の入った建物だ。
昔のアニメに出て来そうな。
「……ありがとう、送ってくれて。帰り……気をつけてね」
「こちらこそ、なんか色々ごめん。身体、大事にするんスよ」
別れるのが名残惜しくて唇を合わせた。
みわの肩が快感にふるりと震え、手がオレの首に回る。
突然ガラリと玄関の引き戸が開く。
「あらあらお帰りなさい、みわ」
「お、おばあちゃんっ!!」
慌てて唇を離し、向き直ると、みわのお祖母さんが微笑んで出てきた。
「お邪魔しちゃったわね、うふふ。黄瀬さん、荷物だけ先に頂くわ、ありがとう」
「あ……す、スンマセン。お願いします」
「明後日まで逢えないんだから、ごゆっくりね」
お祖母さんの足取りは軽く、家の中へと消えていった。
恥ずかしさでなんだかぎこちないみわ。
「あ、じゃ、じゃあ、またね。オクッテクレテ、アリガトウ」
キスを見られて動揺している。
そのカタコトに、思わずぷっと吹き出してしまった。
「あっ、ひどい、笑った!」
「……みわ……」
「なんですかー!」
頬を膨らませるみわが可愛い。
みわの手を握って、その大きな瞳にオレだけが映ってる事を確認して、告げた。
「オレと……付き合って下さい」
ぽかんと口を開けたままのみわ。
「……え? ……私たち、付き合って……たんだよね?」
「記憶がないみわにはちゃんと、言ってなかったからさ」
「……あ……そっか……えと……は、はい、こちらこそ、よ、よろしくお願いします……」
顔を染めて照れる姿はいつも通りだ。
可愛い。
「大好きっス」
指を絡ませて、優しく口付けをすると、みわの唇も戸惑いながらも応じてくれた。
受け入れてくれたのが、泣きそうなほど嬉しくて。
オレたちに嫉妬するように、夜風が頬を叩く。
本格的な秋の気配。
「またね」
微笑むみわを背に、駅までの道を走り出した。