第46章 自宅
まっすぐ。
まっすぐ?
猫まっしぐら的な……?
「……後先考えないバカってこと?」
「違う違う! なんていうんスかね。素直で、芯が強くて、周りを全部巻き込んでいくような、そんな真っ直ぐさ」
「……私、本当にそんな魅力ないんだけどな……」
「いつでも、オレを引っ張ってくれて、でも、疲れた時に包んでくれる。そんな強さ、優しさっス」
うう、買いかぶりすぎだよ……
「あと自覚ないみたいっスけど、みわの頭脳はハンパないスね。バスケを覚えたてであそこまで練れるようになるのは普通じゃない」
「ええー……」
その恐れ多い評価。
うう、イマイチ納得出来ない……。
「声も好き。聞いてるだけで、癒される」
声……低くてコンプレックスなんだけどな……。
「……」
「みわ、とりあえずさ?」
黄瀬くんは枕に顔を埋めてしまう。
「はい」
「オレをサイテー男にしないためにも、早めに着替えてくんないスかね」
……あ……私、何も着てなかった……。
慌てて黄瀬くんのシャツに身を隠す。
「……こ、これは失礼しました……見た?」
「思いっきり見たし、そもそもみわの身体、忘れてねーし……」
「ご、ごめんなさい」
「ケガ人を無理矢理抱くようなこと絶対したくないんスよ」
ドアの前に脱ぎ捨ててある下着を手に取り身に着ける。
……なんとなく視線を感じて振り向くと、枕と同化してたはずの黄瀬くんが片目だけをこちらに向けていた。
「ちょっと! 見ないで……」
その鋭く妖しい目線に、思わず身体が熱くなる。
忘れてしまった私の中の何かを目覚めさせるように。
黄瀬くんが右手の人差し指と中指を揃えて曲げたり伸ばしたりしている。
「……何してるの?」
「ん? みわを愛撫する妄想」
「は、は?」
「みわに気持ち良くなって貰えるよう日々イメトレを……」
「へ、変態!」
急に恥ずかしくなり、急いで服を着た。
黄瀬くんはからかうように笑ったまま。
「わ、私帰るね」
「みわごめん、ちょっとだけ外で待ってて、送るから」
黄瀬くんはベッドから出ようとしない。
「……大丈夫? どこか悪いの?」
思えば少し顔が赤い。
風邪だろうか?
黄瀬くん側に移動して顔を寄せると、わずかに息が荒い。やっぱり変。