第46章 自宅
「ごめん、夢中になっちゃって」
みわとキスをして、オレの中の欲望に火がついてしまったのがよく分かる。
当たり前か……こんなに、好きなのに。
みわのためを思い、身を引こうなんて思っていたのに、彼女はそれを良しとしなかった。
オレを、受け入れようとしてくれた。
かわいくて、愛しすぎて。
「ん……だいじょう、ぶ」
みわは、蕩けた目をしている。
抵抗はなかった。
身体は快感を覚えていたのだろうか。
秘部もとろとろになっているかもしれない。
ああ、あの柔らかい肉壁に包まれたい。
あの熱い蜜の中に入りたい。
別れ話を持ちかけたくせに、今のキスで準備万端になっている自分が情けない。
みわの香りが、体温が、柔らかさがいつもと変わらなかったから。
「……こ、こんなの、いつも……?」
みわは顔を赤らめてモジモジとしている。
「いつもってワケじゃないっスけど……。最初みたいにチュッて軽くする時もあるし。その時の雰囲気とか気分っスかね」
改めて聞かれるのはなんとなく照れ臭い。
「わたし、こういう事に慣れるほど……いっぱいしてたんだね」
いやいやいや、全然慣れてなかったっス。
ま、いつまでも慣れないのも可愛いんだけど。
「なかなか慣れないって言ってたっスよ」
「だ、だよね、こんな……」
染まった頬に伏せた瞳。
……ヤバイ。その姿に煽られる。
このままここにいるのはまずい。
「もう勉強どころじゃないっスね。送るよ、みわ」
暴走しそうな欲情を悟られないように、机の上を片付け始める。
勉強なんか全然進んでない。
「えっ? どうして?」
「……ごめん、送る」
「い、今わたし、なんかいけなかった? ごめんなさい、言って?」
「いや、このままふたりで部屋にいるのがまずいんス。抑えられる自信、ない」
声が、震えた。
相手は怪我人で、記憶がないんスよ。
はあ、本当にオレ、何考えてんだよ。
猿か。猿なのか。
「じゃあ……少し、家の中を見て回ってもいい?」
「いいけど……じゃ、オレ少しの間、部屋にいるから好きなだけ見て回っていいっスよ。気が済んだら送るから、声掛けて貰える?」
「うん、分かった」
ひとりになってクールダウンしたい。
このまま一緒にいるのはマジでやばい。