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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第46章 自宅


映画で見るキスシーンでは、確か目は閉じていたはず。

分からないけど、私もそうした。

唇に、柔らかいものが触れる。
少し驚いて目を開けると、睫毛がぶつかる程の距離に黄瀬くんの顔があった。

男の人の唇って、こんなに柔らかいんだ。

でも、この感触……やっぱり初めてではない、そんな気がする。
とても安心するぬくもり。

ちゅっと軽く唇が触れて、すぐに離されても目に宿った欲情の色は変わることなく、彼の中に燻っている。

「……満足?」

足元からムズムズと何かが這い上がってくる。

身体が勝手に求めている。
足りない。

「……もっと……」

自分でも分かるくらい震えながら、彼の首に手を回した。

「何言ってんスか、怖いくせに……」

再び唇が触れたが、すぐに湿った温かいものが上唇、下唇を順に丁寧になぞっていく。

「……口、開けて?」

ビックリするほど甘いその声に耳の奥が疼く。

恐る恐る口を開くと、唇に触れていた温かいものが入ってくるのが分かる。

それが舌だと気付いたのは、少ししてからだった。

「ん……っ」

彼の舌が口内を優しく這い、上顎を擦ると声が勝手に出てしまう。

歯列を確かめるようになぞられ、熱い舌が絡むと、ぴちゃりという音がして、無性に恥ずかしくなる。

考えていられるのは、ここまでだった。

彼の手が私の後頭部に添えられ、舌の動きが更に激しくなると頭が真っ白。

身体に合わせて震える椅子がカタカタと鳴り、淫らな水音までもが脳に浸透していくようで、身体がジンジンして力が入らない。

途中から、彼に全て委ねてしまっていた。

「……はぁ……っ、は……っ」

「大丈夫? 息止めちゃってた?」

唇が離れてふたりの間を銀糸が繋ぐ。

彼に問いかけられて初めて、自分が息を止めていた事が分かる。

そのまま息の根が止まっていても気が付かなかったかもしれない。

「……好きだよ、みわ」

そう囁いた声が温かくて、甘く優しくて、なんだかとてもくすぐったくて、涙が出た。

「……みわ?」

「諦め、ないで……私、頑張るから……お願い……」

口が意志を持っているかのように、勝手に話し出す。

でも、今の気持ちとの乖離はなかった。

優しく抱きしめられ、再び唇が重なる。
身体はもう震えていない。



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