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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第46章 自宅


「……別れる、っていうこと?」

「みわがそうしたいなら、それでいいっスよ」

……なに、なんで?

「無理に思い出そうとして頭痛がしたりっていい事ないでしょ。身体、大事にして欲しいんス」

「……黄瀬くんは、それでいいの?」

あんなに、優しくしてくれる黄瀬くん。

「いいんス、オレは」

目は伏せてしまっていて、合わない。
長い睫毛がまばたきとともに動くだけ。

「……忘れちゃった私の事、怒ってる?」

もう、嫌になってしまった?

「そーゆーんじゃないから。この話、もう終わりにしよ」

「……終わってないよ。全然終わってない。私、これじゃ納得できない、し」

温度の低い返事に怯んでしまいそうになるが、これが彼の本意ではない気がする。

そして、いま手を離したら二度と戻れない、何故かそんな予感がした。

「じゃあ、今まで通りできるんスか? オレに触れる事すらできない状態で?」

「……それは……」

「オレたち、一緒に暮らしてたんスよ」

……え?

「いま、なんて……?」

「……オレたち、この家で一緒に朝起きて、学校行って、帰ってきたら一緒に飯食って勉強して風呂入って、一緒に寝てたんスよ」

どういう、こと?

「だからね、元通りになろうっつーのが、そもそも無理なんスよ」

投げやりにそう言って、拳を握った。
どうしたら、どうしたらいいの。

「あっ、あの! ……キス、しよう」

無意識に出た言葉だった。

「はぁ!? 何言ってんスか!?」

「わっ、私だってどうしたらいいのかっ、わからないんだもん……!」

「分かんねーのに誘うなよ!」

彼も戸惑っているのが分かる。
当然だよね、突然こんな……。

でも。

「わからないけど、嫌なの、このままなのは、嫌。黄瀬くん、いつも通りに、して……!」

黄瀬くんが顔を上げて、目が合う。

その目は……興奮?
病室で覗き込まれた時の瞳とは明らかに含んでいる成分が異なる。

綺麗。

キラキラと、宝石みたいな瞳。
見つめられたら、離せなくなる。

彼はカタンと音を立てて席を立ち、私の隣に立った。

心臓が、バクバクする。
キスなんて、したことない。

彼の掌が私の頬に触れると、また少し身体がビクついてしまった。

「……アンタがしろって、言ったんスよ……」

ゆるり、ふたりの影が重なった。


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