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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第46章 自宅


「みわ、はい」

タクシーを降りた私を、黄瀬くんはおんぶすると言ってくれた。

「大丈夫、もう部屋に上がるだけだし……」

ただでさえ近距離でタクシーを使わせて、更におんぶなんて、迷惑かけられない。

また少し息が上がってしまうが、なんとか歩いて黄瀬くんの家まで辿り着く事ができた。





玄関に入ると、なんとなく初めてではない感じがする。

いや、初めてじゃない、んだよね。
うう、違和感……。

リビングに通されて、ソファに腰掛けた。

「みわ、大丈夫?」

温かいお茶を持って来てくれた黄瀬くんが心配そうに覗き込む。

「大丈夫、ごめんね余計なお金使わせて。傷が痛いとかじゃないから。ちょっと体力が……」

とはいえソファの背もたれに身体を投げ出すと、傷が圧迫されてさすがに痛みを感じた。

背中が触れないように肘掛け部分に寄りかかる。

淹れて貰ったお茶に口をつけると、じんわり全身が温かくなった。

……好きな味だ。

「このお茶、美味しいね。それにしても黄瀬くんが緑茶って、ちょっと意外」

どちらかというと、彼は和よりも洋を好む気がする。

「……みわが選んだお茶っスからね」

そう言って黄瀬くんは切れ長の目を伏せた。
私は本当に彼の生活に影響を及ぼす距離にいたらしい。

……思い出したい。
ふたりの関係、その距離を。

きっと、今の私とは違う私がそこにいたはずだ。

なんとなくここに居辛くなって、席を立つ。

「ごめんね、ちょっとお手洗い」

「あ、……うん」

トイレに行き、帰ってくると黄瀬くんが驚いた顔でこちらを見ている。

「みわ、よくトイレの場所分かったっスね」

「え?」

廊下を振り返ると、4つのドアがある。
確かに、こうして見ると区別はつかない。

特に何も考えていなかったけれど、なぜ私は今、迷わずトイレのドアを開けられたのか。

「……なんでだろ、たまたま?」

身体が、憶えていたのかな……?

「……ま、たまたまっスかね。みわ、じゃあ早速だけど勉強するっスか?」

既に飲み物をダイニングテーブルに準備してくれている黄瀬くんが微笑んでそう言った。

どことなく懐かしい感じがして、こころが少し躍った。


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