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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第45章 欠落


翌日。

「あ、おばあちゃんいいよ、荷物持つから」

経過が良く、私は退院出来ることになった。
まだ暫くは安静生活だけど。

「まだ重い物持っちゃだめよ。このままばあちゃんちに来る?」

「……あ、昼間は、黄瀬くんのおうちに行ってみようかなってことになってて……」

「そう。それなら夕飯はふたりで食べるのね」

「えっ、それはまだ分からないけど……」

「久しぶりのふたりの時間じゃない。もし帰ってくるなら、メール頂戴ね」

……ふたりの時間。
まるで恋愛ドラマのような言葉。
……私には、最も無関係だった、言葉。

「うん、わかった」

「荷物、持つっスよ」

あ、この声は。
しゅるりと伸びてきた腕の主を見やる。

太陽のような笑顔だ。

「あら黄瀬さん、ありがとう」

「黄瀬くん、わざわざ来て貰ってごめんね」

「帰りはみわを家まで送るんで、荷物はこのままオレが持って行きますけど、大丈夫っスか?」

「大丈夫よ。よろしくね」

「任せて下さいっス!」

「じゃあみわ、また夜にね」

「おばあちゃん、ありがとう!」

おばあちゃんに手を振って別れて、ふたりきりになった。

「タクシー使おうか」

「え……黄瀬くんの家ってここからそんなに遠いの?」

「いや、遠くないっスけど、歩くの辛いっしょ」

「全然! 大丈夫。ありがとう」

黄瀬くんっていつも、こうして私のこと甘やかしてくれてたのかな……。






……




息が、切れる。

確かに1週間近く寝たきりだったけど……こんなに、体力って急に落ちるもの?

しんどくなってきた……まだ、かかるのかな……。

歩幅もいつもよりも物凄く狭いのに、足が重い。顔が上げられない。

ちょっと、休憩した方がいいかも……と思った途端、黄瀬くんが足を止め、目の前に車が停まった。

タクシーだ。

「みわ、乗れる?」

支えて貰いながら、後部座席に乗り込んだ。
身体がだるくて動かない。

黄瀬くんも乗るんだから、奥に詰めなきゃいけないのに……。

「スイマセン、彼女ケガ人なんで、オレ助手席座らせてもらっていいスか?」

黄瀬くんは運転手さんにそう言って助手席に乗り込んだ。
私の事、私よりも分かっているみたい。

タクシーは1メーター圏内で、綺麗なマンションの前に着いた。


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