第7章 キス
静かな室内。
雨音だけが断続的に耳に届く。
唇の重なっている部分が熱すぎて、溶けてしまいそう。
絶え間なく、啄むように動く黄瀬くんの唇に溶かされて、食べられてしまうんじゃないか。
力強い腕。
いつもなんでも出来てしまう黄瀬くんの余裕のないキスに、彼を独占しているような、優越感にも似た感覚が沸き起こる。
どれくらい唇を合わせていただろう。
息が苦しくなってきて、黄瀬くんの胸元をたたく。
「……っはっ……ちょっ、いき、できな……」
黄瀬くんは唇を離して、微笑んだ。
「みわっち……息止めてたんスか?」
「だ、だってどうすればいいのか分かんなくて……!」
彼の切れ長の瞳がみるみるうちに見開かれる。
「みわっち、もしかして……キス……初めて?」
「す、すみません……今日が正真正銘、初めてでした……」
「そっか……なんのムードもなくて、ごめん」
そう言いながらも、また顔が近づいてくる。
長い長いくちづけが、始まった。
キスをしていると、腰から下のあたりがなんだかそわそわしてくるというか……力が入らなくなる。
黄瀬くんが腰を支えていてくれなかったら、恐らく身体を起こしていることすら出来ていないだろう。
「……舌……入れてもイイっスか?」
「……!」
そう言ってぺろりと少し舌を見せた黄瀬くん。
その仕草がとってもいやらしく、艶めかしく見えた。
「……え……えっと、え、あの、ど、どうぞ……?」
黄瀬くんはくすくすと笑うと、舌で私の唇を弄りはじめた。
「ん……っ」
「その声、エロくて好き」
「え……っ何それ……っあ」
舌が、口内に入ってくる。
さっきまでの優しいキスとは、全然違う。
支配される。熱くて、柔らかくて、別の生き物みたいな舌に、犯される。
感じたことのない触感で……
息が荒くなる。頭に靄がかかる。
これ以上は自分がどうなるのかさえ、わからない。
「ま……まって……はっ……あぅ……」
口もとから唾液が流れ落ちるのを感じる。
私の? 黄瀬くんの?
黄瀬くんの舌が上顎を撫でたとき、感じたことのない感覚に、身体が跳ね上がるほど反応してしまった。
「ふぁっ……!?」
「ここ、弱いんスね」
絡み合う舌と身体。
頭に靄がかかって、理性的に考えること自体が、できなく……なってくる……。