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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第45章 欠落


「……あ」

みわが口元に手を当てて何かに気付いたような素振りを見せる。

「何か、思い出したっスか?」

「いや、さっきなんとなくおばあちゃんの家に住んでる気がしたんだけど……私、高校に入ってからひとり暮らししてた、よね?」

少しずつ、思い出してきたのか?

「うん、出会った時はひとり暮らししてたっス」

「……出会った時は、って事は……今はしてなかったんだっけ? 最近、どうやって登校してたかが全然思い出せないの……変だよね、こんなの」

「……みわ、ストーカーされてたりした記憶とかは?」

「……え、特にそんな記憶ないけれど……」

ヤツに関する記憶もない。



胸が、痛い。

どうして、あんな大切な時間を忘れてしまったんスか……

いや、元はと言えばオレのせいだ。
みわを責めるのはお門違い。

「……みわ、話しておきたい事があるんスけど」

「うん、なあに?」

そう返すみわの顔は今までと同じだ。

オレとみわのお祖母さんは全てを話すべきか迷っていたが、少しずつ話していこうという事に決めた。

「オレとみわって、付き合ってたんスよ」

数十秒の沈黙があった。

「……え?」

みわの顔は強張っていた。

「……え、いつから?」

「5月、っスね」

「うそ、私と黄瀬くんが?」

「そう」

思っていたよりもキツイ。
忘れられてしまう事がこんなに悲しいなんて。

みわの目が醒める前までは、もし万が一記憶喪失になっていたとしても、またイチから惚れさせるっス! なんて思ったりもしたけれど、とんでもない。

みわの一言一言にココロを抉られる。

「……あ、そ、そう……なんだ……ごめんなさい、私……覚えてなくて……じゃあ……デート、とかしたのかな……?」

デートだけじゃないっスよ。
色々な事件があって、ふたりで暮らす事になったんじゃないスか。

何度も身体を重ねて。

「うん。あちこち行ったっスね。まあ最近は色々あって……ふたりで家で過ごすことが多かったけど」

この発言に、みわの肩が大きく震えた。
何に反応したんだ?

「……そ、そうなんだ……そっか……」




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