第44章 急転
救急車への同乗を求められ、笠松が名乗りをあげる。
監督はまだこちらに到着していないため、後のことは小堀と森山に託した。
「…………みわ!!」
黄瀬が、ストレッチャーに駆け寄る。
正気を失っているようにも見える黄瀬だが、今、みわの側に必要なのはこの男だと笠松は判断し、同乗を求める。
「黄瀬、お前も来い」
それが聞こえているのか、最早耳に入っていないのかは分からないが、黄瀬も黙って救急車に乗り込んだ。
辛うじて、みわの命は繋がっていた。
しかし、状態が良くないだろう事は救急隊員が交わす言葉や彼女に繋がれた管の多さが物語っている。
黄瀬は、ずっとみわの手を握り、祈るように顔を顰めていた。
笠松は、黄瀬に声を掛けることもできずにただ、そこに居ることしかできなかった。
救急隊員からの質問に、彼の知り得る範囲で事務的に答えながら。