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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第7章 キス


そうは言ったものの、気まずい空気になってしまった。

明らかに戸惑っているみわっち。
オレも、色んな感情がごちゃ混ぜになって、少し冷静さを欠いているかもしれない。

ふと流した涙に気恥ずかしさを覚えて、軽く目が泳いでしまう。

視線の先に、小さな勉強机があった。

必要最低限のものだけ置かれた机。
辞書などと一緒に、雑誌が置かれているのに気がついた。

「みわっちの机、ちーさくて可愛いっスね」

「う、なんか部屋も殺風景だし、女子って感じ、全くしないよね……あはは」

話題を見つけたオレはさりげなく立ち上がり、机のところまで歩いていった。

先ほど目に付いたのは、バスケ雑誌とファッション誌だ。
表紙にはそれぞれ"キセキの世代 大特集"とか"現役高校生モデルの素顔"と、でかでかと印刷されていた。
そして見慣れた自分の顔。

ああ……結局、みわっちも同じか……。
キセキの世代……モデル……。

「あっ! み、見ちゃった……?」

「オレの載ってる雑誌、持ってたんスね。……オレの事、知ってたんスね」

なんだかとても気分が落ち込んだ。
やっぱり、オレ自身を見てもらうっていうことは不可能なんだな。

そういうのは、やっぱり諦めるべき、なんだな。

そう考えながら本を棚から抜いた時に、ひらりと二つ折りにされた紙が落ちた。

雑誌の発送伝票……ネットで購入したらしい。

購入日は、つい先日だ。
【バックナンバー】の記載もある。

「……あれ、コレ最近買ったんスか?」

「……私……素の『黄瀬涼太』しか知らないな、って。キセキの世代とか、高校生モデルとか、まだ私の知らない部分も見てみたいなって思って」

「え……」

逆でしょ? フツー。

"キセキの世代が入部するんだってよ……"
"あのモデルの子と同じ学校だって……"

そこには、『黄瀬涼太』は、いない。

オレはオレなのに、誰もオレを見ていない。
ずっと諦めてきたことだ。

なのに。

「だって、そういう過去とか、色んな顔があって、今の黄瀬くんを作ってるんだもんね。素の顔だけじゃなく、知りたくて」

この子は、ずっと『黄瀬涼太』を見てくれていた。

肩書きがあるオレじゃなくて、そのままのオレを。

黒子っちが言っていた通りだ。
ちゃんとオレの事、見てくれている。


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