第42章 休日の過ごし方
恥ずかしい。
後ろからということは……全て、見られているということだ。
こんな場所で。
涼太……これって……このまま、最後までしたいって……ことだよね……?
そう思うと、目の前には涼太がいないのに後ろから続けられる愛撫に、違和感を感じてきた。
……後ろにいるの、涼太、だよね?
当たり前だ。
ここには、ふたりしかいないんだから。
なのに、勝手に心臓が嫌な音を立てる。
キッチン台についた指が僅かに震える。
思わず後ろを振り返り、涼太を確認してしまう。
涼太と目が合った。
「……後ろからだと、オレが見えなくて怖い?」
さっきまでの少し意地悪な口調から一変、優しく気遣われるような囁き方。
正直に言うと、怖い。
いま物凄く、怖い。
今までも怖くなってしまうことが沢山あったけど、目の前の涼太が優しく包んでくれたから、今ではああやってセックスできるようになった。
でも、後ろだけはやっぱり怖い。
ただ、見えないだけなのに。
こんなに怖いとは思いもしなかった。
このまま……最後までしたら涼太が見えてない間、どういう風にフラッシュバックしてしまうかが想像できない。
「……ごめんなさい、少しこわい……」
全部、涼太で塗り替えて欲しい。
でも、積極的にそう言えるほど、受け止められる器が私にはない。
「謝らないで。調子乗って、ごめんね」
そう言って優しくキスをしてくれたけど、私のこの気持ちは、涼太の傷まで抉っている。
「ううん、涼太は悪くない……おかしいでしょ、此の期に及んで怖いとか」
普段、あんな事までしているのに、こんなことくらいで、怖いとか……笑えてくる。
どれだけ自分勝手なんだ。私は。
「おかしくないっスよ。言ったでしょ、ひとりで泣かないで。ひとりで苦しまないで」
そう言ってくれる優しい声に甘えていいのか。
どうしたら正解なのか、分からない。
あれだけ、涼太とひとつになれる行為をしたのに、私の頭と身体にはまだあの時の記憶が染みついている。
いつになったら、解放されるの。
解放されたい。
「りょうた……」
「うん、どうして欲しいっスか?」
「…………たすけて」