第42章 休日の過ごし方
「!!」
見慣れた天井に、ホッとする。
あの時の悪夢を見て、目が覚めたらしい。
心臓がバクバクして、汗も大量にかいている。
涼太は……隣にいない。時間が分からない。
走りに行ってるならいいんだけど……。
「……ぅ」
突然込み上げてくる吐き気に耐え、トイレへ急いだ。
急いで蓋を開けて、声が出ないように吐く。
もし涼太が家に居て今の気配に気づいたら、心配させてしまう。
「……ぅ……ぇ……」
こればかりは、どうしようも出来ない。
勝手に夢を見て、吐いてしまう。
最近は、毎日苦しめられていた頃よりも比較的落ち着いていたのに……。
昨日、寝る前に考え過ぎてしまったのかも。
トイレットペーパーで口と涙を拭い、水に流した。
消臭スプレーをしている時に、自分は何をしているんだろうと悲しくなる。
素早くトイレを出て、洗面所に向かう。
歯磨きと洗口液で口内をキレイにした。
「ふう……」
洗面台に両手を付いて溜息ひとつつくと、玄関のドアが開いた気配がする。
「あ、お帰りなさい」
「おはよ、みわ。起きたんスね」
息が上がって汗をかいた涼太。
いつもの爽やかな笑顔だ。
「……変なヒト、いなかった?」
「ん? 全く問題なしっス! みわ、もう起きるなら朝ご飯、オレ作るっスよ?」
「でもいつも作って貰ってばっかりだし……一緒に作ろうか」
「じゃあみわ、みそ汁作って! みわのみそ汁好きなんスよね」
「別に誰が作っても同じだと思うんだけどなあ」
そんな日常のやり取りをしながら、キッチンへ向かう。
「あ、オレシャワー浴びてくるから! まだ待ってて!」
「?」
「折角の休みで時間も気にしなくていいんだから、一緒にキッチンに立ちたいんス」
それがいかにも涼太らしくて、自然と笑顔になった。
「分かった。待ってるね」
光が満ちたリビングのソファに座って、テレビをつける。
朝からニュースキャスターが元気に今日の天気を伝えてくる。
その声は全く耳に入って来なかった。
久しぶりに……すごーく、嫌な夢だったな……。
ソファの肘掛部分に頭を乗せる。
いつになったら、見なくなるかな。夢。
今は、涼太といて幸せなのに。
いつまで、縛られるのかな。