第41章 貴方の好きな
やっぱり朝から涼太が、変。
朝はマンションの前でいきなりあんな……キス、するし。
肩を抱いて登校なんて初めてだし。
今日は部活でも教室でも何処でも【みわ】って呼ぶし。
女子の視線がイタイんですけど……。
昼休み、あんな事があったけど、それに触れるような事は一切言わないし。
帰りも、密着して下校。
何が一番違うかって、練習中のギャラリー(今は校内の生徒だけだけど)や帰り道、ファンの子がいても、見向きもしない。
今まで、どんな事があっても我慢して練習中の休憩時間や帰り道には笑顔で対応していた彼だったから、その異様さに先輩も驚いていて。
私も、視線ひとつ合わさないその姿を見るのは初めてで、秘められた彼の怒りを感じた。
そしてまた、エントランス前でキス。
もう、家の目の前なのに。
このキス、イチャイチャじゃない。
……熱い目で自由を奪う、本気のキスだ。
「っぁ、はぷ、んっ」
誰かに、見られたら……!
いつ腰が砕けてもいいように、涼太の腕はあらかじめ私を支えている。
これは、衝動的なキスじゃない……?
「はっ、ね、ねえ、りょっ……たぁ」
言葉にならない言葉をなんとか紡ぐ。
「ん……?」
目を合わせた涼太は、今までにないくらいの色気で、思わずクラクラした。
口が勝手に『なんでもない』と言いそうになる。
「あの、恥ずかしいから、その……」
「……ベッド行く?」
ベッドって、まだ、家にも入ってないんですけど!?
涼太はキスを継続させようとするから、このままここで最後までしかねない勢いに、こくこくと焦って頷く。
「仕方ないっスね」
そう言って、額にキスを落とした。
ふらふらする腰を支えてもらいながら移動して、なんとかエレベーターホールに到着。
立ってるのがキツイ。
エレベーター、早く来て。
ふたり、エレベーターの中でも沈黙だった。
身体は密着してるのに。
「あの、昼休みのあれって」
「……その話は、しないで欲しい」
ピシャリと拒絶された。
普段会話してて、こんな事絶対にない。
「うん。……ごめんね」
それだけ言って、それ以上話しかけることは避けた。