第6章 日常の変化
みわっちが、オレと付き合うって。
ちょっと勢い的なものがあった気がするけど、そんなのは大きな問題じゃなくて。
オレの外見じゃなく、ちゃんと内面まで見てくれるコ。
自分を捕らえているトラウマから、なんとか抜け出そうと一所懸命で。
努力する才能を持ったコ。
気付いたら、気になってた。
目で追ってた。
周りを取り巻く女のコとは違う。
素直に、一緒に居たいと思う……一緒に頑張りたいと思う。
でも多分、彼女はオレのこと、好きなヤツとしては意識してない。
当たり前だ、彼女は男が怖いんだから。
それならば、仕方ない。
これから、惚れさせるしかないんじゃないスか。
……でも、心配なのが他の女の存在で。
前にも、彼女になった子には嫌がらせとかいじめがあったらしく、それが原因で別れた事も少なくない。
彼女には、そういう思いをさせたくない。
ぼんやりそんなことを考えていたら、周りの女の話を全く聞いていなかった。
「ねえ、あの人すごくない? 神崎さん」
「あー、こないだの小テスト全教科満点でしょー? あそこまでいくとキモいよね〜」
「オベンキョが友達なんじゃない?」
「あたし、神崎さんみたいに頭良くても、あんなにダサいんじゃイヤだな〜」
「黄瀬くんは、どんな子が好みなの?」
「……え?」
「もー黄瀬くん聞いてなかったのー? 黄瀬くんはどんな子と付き合いたいー?」
ああ、この無駄な時間。
みわっちと、過ごしたい。
あの笑顔が見たい。
「頑張ってるコが好きっスわ」
「え〜じゃああたしも頑張っちゃおうかな! 誰かさんみたいにダサくならないように気をつけないと〜アハハ!」
「あとは、他人の悪口言わないコっスかね」
場が凍りついた。
オレは、スタスタと彼女の席に歩いていく。
「みわっち、何してるんスか?」
「えっ……あ、このフォーメーションの違いがよくわからなくて」
本当に、勉強熱心だな。
「ああ、これは実際見た方が分かりやすいかも。放課後、部活前に体育館で説明しよっか?」
「わ、いい? ありがとう。あとね、分からない用語をまとめてきたんだ。これも一緒に教えて欲しいな」
「オッケー!」
みわっちとの距離が、少しだけ縮まった気がする。
オレは、浮き足立っていたのかもしれない。