第40章 独占欲と
「……分からないこともないの、彼女達の気持ち。黄瀬涼太は魅力的すぎて、全部、知りたくなっちゃうの。全部欲しくなっちゃう。それを、私が独り占めしているんだから……」
みわっちは息もつかず、そう言った。
「オレは、許せない」
嬉しいけど、大切な人を傷つけられて黙っていられるほどオレはイイ人じゃない。
「……私もそんなに良い子じゃないから、許してあげて、とは言えないけど……私達の仲がギスギスする方が、やだな」
はあ、と熱い息を吐いて目を伏せる。
熱が上がってきているかもしれない。
「……長々と話してごめん。ツライっスね。ちょっと、氷持ってくるから待ってて」
くしゃっとみわっちの髪を触ってベッドを離れる。
冷凍庫から氷のうと氷を出し、タオルを何枚か持って部屋に戻り、身体がこれ以上冷えないよう秘部の辺りは蒸しタオルで拭い、下着と部屋着を履かせてあげる。
「さむい……」
オレの服を握る手には力がない。
毛布を持ってきて、布団の上から下半身にかけた。
氷入りの袋をタオルで包み、氷のうと一緒に患部を冷やす。
「寒い? 無理?」
「つめたい……」
「こんなんじゃ、最中ずっと痛かったんじゃないスか? ごめんね」
みわっちは目を瞑ったまま、ふるふると首を振った。
「ぜんぜん。それどころじゃなくて……痛み、感じなかった。我にかえったら少し痛んだけど」
みわっちはいつも、全身でオレを受け入れてくれる。
それが愛おしすぎて、好きすぎて、発狂しそうだ。
それを、こんな風に傷つけられて。
「みわっち、オレがさ、みわっちのファンに傷付けられたらどうする?」
「……私にファンなんていないけど、もしそんなことがあったら……許さない」
いるっスけどね。みわっち結構モテるんスよ。
しかし、迷いなく言った『許さない』の迫力に、思わず怯んだ。
普段の柔らかい口調からは想像もつかない凄みだった。
「それと一緒なんスけどね。オレの気持ち」
「ぅ……」
「とりあえず、寝て。熱下がんないようなら明日は学校休むんスよ」
「……気合いで治す……」
そういって間も無く、寝息が聞こえてきた。
艶やかな髪を、再び撫でた。