第40章 独占欲と
「で、でも大丈夫。私が折れないから、少し棒で叩かれたり、蹴られたりしただけ。すぐに、諦めて帰って行ったよ」
「……なんでもなかったみたいに言わないでよ。そいつらの顔、覚えてる?」
「それが、暗かったのと水かけられてたのでよく見えなくて……」
みわっちは極めて明るい声で、気丈に振る舞って報告する。
怖い思いをしたのに、オレを気遣って。
「……畜生」
なんで、ひとりで帰したんだ。
意地でも一緒に帰るべきだった。
オレたち、なんで喧嘩なんかしてたんだ。
キレイな白い背中につけられた、打撲痕。
ひどい。
見えない所ばかりをやられている。
「どうして……狙われ……」
「うん、それが……宅配便、あったでしょ」
オレの荷物が届いた時のか。
みわっちの話によると、1階で待ち伏せしていたファンが、オレ宛ての荷物に気付き、会えると思って勝手に配達員にくっついて、マンション内に侵入してきたらしい。
なのに、荷物を受け取りに家から出てきたのはみわっちだったから……ただの逆恨みというか、妬みじゃないか。
胸糞が悪くなる話だ。
……でもあの時、オレが玄関先に出ていれば。
帰ってきた時だってそうだ。
喧嘩をしていてオレも冷静じゃなかったけど、あの時のみわっちの様子はおかしかった。
雨が降っていたのかという話に否定をされなかったというだけで、思い込んでしまっていた。
熱の事だって、気付くタイミングはいくらでもあった筈だ。
セックスも、ちゃんと丁寧にしてあげていれば……
ホースからの放水で溺れそうに、だって?
そんな残酷なマネ、絶対に
「黄瀬くん」
オレの思考を遮るように、みわっちが胸に顔をすり寄せてきた。
甘えている時の癖だ。
「……も、大丈夫だから。打ち身だけだから、すぐに治るよ。犯人探しとか、しないで」
どうして、そんな事言うんだよ。
こんな目に遭ってるのに。
「どうして……みわっち……!」
「どうしても。私達には今、集中しなきゃいけないことがあるから」
ウインターカップの事、忘れたわけではない。
でも、オレはみわっちの事だって同じように大事だ。
額をぐりぐりと押し付ける姿が可愛くて堪らないのだが、とても頷ける話ではない。