第40章 独占欲と
快楽に支配されていて全く気付かなかったが、欲望が落ち着いてみると、確かに寒気がしてきた。
この感覚、やはり熱があるみたいだ。
全身濡れてしまったからだろうか。
……それとも……
ふと背中に刺すような痛みを覚え、体勢を変えようと寝返りを打ったところに涼太が戻ってきてしまった。
「みわっち」
「あっ、うん、なに?」
「……なんスか、その背中」
……しまった。
慌てて、彼の方に向き直る。
涼太は手に色々な物を持っていたが、全てサイドテーブルやベッドに放り投げ駆け寄ってきた。
「な、なんでもない」
「なんでもなくないだろ! 背中、見せて!」
彼にしては珍しく強い語調で言われると逆らうことができず、おずおずと背中を向ける。
「……これ、誰にやられたんスか」
背中についてしまった無数のアザ。
先ほど、自分もバスルームの鏡で確認したが、誰から見てもどこかにぶつけた、という痕ではない事が明らかだった。
今日は、私が早くから懇願したのもあって背中を見られずにホッとしていたのに。
「みわっち」
「痛っ……」
涼太の指が、アザのひとつをなぞると鈍い痛みが広がった。
「ねえ、どうしたの」
誤魔化しが効かない、強い口調だ。
見られてしまった以上、隠し通すのは不可能だと判断した。
……もう、嘘も吐きたくない。
「……今日、帰りに……路地裏に引き摺り込まれて……やられちゃった……」
情けなくて目に涙が滲んでくる。
いつまでも弱い自分がなくなってくれない。
「……誰に?」
「……分からないの」
「みわっち」
「ほ、本当に分からないの……っ、ふ、ファン、だって、言ってた」
それを聞いて彼は苦しそうな表情をした。
だから……言いたくなかった。
「女か」
「……うん、女の人。大人の人で……5、6人はいた、かな……」
強い語調とは対照的に、私に触れる手は柔らかく、優しい。
「で、でも変な事はされてない。最初、ホースを口に突っ込まれて別れるって言わないと溺れさせるとかそういう……って、あ」
ぐっと身体を引かれて、抱きしめられた。
背中には手が触れていない。
腰に触れた手が、震えていた。