第38章 嫉妬と喧嘩
「ご、ごめん……」
拒否された。拒否された。
もう、触れられるのすら、嫌なのか。
嫌だ。
オレは、別れたくない。
「みわっち、お風呂上がったら……話、させて欲しい」
「……わかった……」
みわっちは、小さく頷いて洗面所に入っていった。
そわそわと、落ち着かない。
腹も減っている筈なのに、不思議と感じない。
なんて切り出そう。
どうやって話せばいいんだ。
悶々としているうちに、リビングのドアが開いた。
お風呂上がりの上気した肌のみわっちに興奮してる場合じゃないだろ、落ち着け。
「……みわっち」
「黄瀬くん、お風呂まだでしょ……先に、入ってきたら」
「あ、うん」
全然頭の中が整理できてないから、助かるには助かるんだけど……。
……けど、風呂に行ってる間にまた部屋に閉じ籠っちゃったら……
みわっちをちらりと見ると、そんなオレの事なんかお見通しみたいで、力ない微笑みを見せた。
「……大丈夫、ここにいるから」
その表情を信じて、オレは急いで浴室に向かい、風呂を済ませた。
言葉を交わせたことが嬉しくて少し安心したけれど、本題はまだまだこれからだ。
廊下に出ると、リビングから良い香りがする。
顔を覗かせると、みわっちが食事の支度をしてくれていた。
「……黄瀬くんも、食べる?」
「食べる、食べるっス!」
ふたり、向かい合ってする食事。
たった2日ほどしか経っていないのに、もう何ヶ月もこうしていなかったみたいだ。
いつものみわっちのご飯。
少し薄味だけどダシの味がちゃんとして、栄養バランスがいい。
今までと違うのは、食事中の会話がないことだ。
学校の話、バスケの話、テレビの話……一緒にいて、話が尽きることがない。
それと同時に、無言でも苦痛じゃない。
黙っていても、彼女と過ごす時間が好きだ。
でも、この無言は違う。
ふたりの間の空気は、明らかに以前のものとは違ってしまっていた。