第38章 嫉妬と喧嘩
翌朝も、オレたちが顔を合わせることはなかった。
みわっちはオレがロードワークの後、シャワーを浴びている間に出発してしまったようだ。
付き合うようになってからこんな事はモチロン初めてで、どうしたらいいのか戸惑いを隠せない。
それと同時に、家中のあらゆる痕跡から、普段みわっちがどれだけオレのことを考えて生活してくれているのかを、思い知る。
ひとり暮らしに戻ったような寂しい家の中。
牛乳だけ飲み干して、朝練に向かった。
1日、腫れた目をしたみわっちを見つめていたが、目が合う事は殆どない。
みわっちとあきサンのコンビも見られなかった。当然か。
部活が終わって、今日もみわっちはオレがシャワー室に行っている間に帰ってしまっていた。
もう、ダメかもしれない。
そんな事を考えている矢先の事だった。
「黄瀬、お前たち別れたの?」
オレの隣でシャワーを浴びていた小堀センパイが、タオルで身体を拭きながら神妙な面持ちで話しかけてきた。
他の部員はいない。オレたちだけだ。
「センパイ……いや、一応まだ、別れてはいないっスけど……」
「このまま別れるつもり?」
……戻れるんだろうか。
「……分かんねっス。正直、前みたいに戻れる自信もないっつーか……」
「……じゃあ、俺が貰ってもいい?」
一瞬、言葉の意味が分からなかった。
「……え?」
「……俺、神崎に告白してもいい?」
「……な……に言ってんスか、小堀センパイ」
何の冗談だ?
小堀センパイらしくない。
「いや、お前たちがうまくいってるなら邪魔する気はなかったし伝える気もなかったんだけど、別れるっていうなら」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっス! 小堀センパイ、みわっちのこと……!?」
センパイは、優しく微笑んで言った。
「……想うのは、自由だろ?」
冗談でもカマかけてるでもない、その表情で、センパイは本気なんだって事が分かった。
思えば、センパイはいつもみわっちを気にかけている。
まさか、まさかみわっちの事を好きだったなんて。