第38章 嫉妬と喧嘩
あきサンと屋上で待ってたのに、みわっちがあまりに長い時間来ないのでふたりで校内を探しに行こうとしたら、保健室に運ばれていく彼女を見つけた。
小堀センパイと森山センパイが、体育館で倒れているみわっちを見つけたらしい。
どうして体育館なんかに……?
「黄瀬、ちょっと」
小堀センパイが険しい表情で手招きする。
「ごめんねあきサン、先に戻ってて」
「黄瀬、神崎って過呼吸の発作持ちだったのか?」
「え、小堀センパイ、どうして……」
「俺、気絶する寸前の神崎見つけたんだけど、症状が過呼吸だったから。ウチ、家族が発作持ちだからよくわかる」
「……ちょっと不安定になったりすると、たまに、出ることがあるっス」
ちょっと、ではない。
今まで発作が出たのは、ストーカー事件の時。
過度のストレスに耐えられなくなった時だ。
「喧嘩したなら、早く仲直りしろよ?」
「え? オレっスか?」
「なんだ、喧嘩中じゃないのか? さっきの神崎の態度からして」
確かに。
あんなに強い語気で拒否されたのは初めてだ。
屋上に来なかった事と、何か関係があるんだろうか。
「……なんか、怒らせちゃったんスかね」
後でゆっくり話を聞こう。
そう思っていたのに、みわっちは教室はおろか、部活中でもオレと一切話そうとはしなかった。
部活が終わると、オレが着替える前に既に帰宅しちゃったし。
女どもがいるから、危ないって言ってるのに……。
でも家に帰ると、ちゃんとみわっちの靴が玄関にあって、安心した。
……そりゃ、彼女が帰る家はここしかないから当然か。
しかし、家の中は真っ暗。
一緒に暮らし始めて、初めての事だ。
みわっちの部屋のドアをノックする。
「みわっち……起きてる?」
応答なし。
寝ているのかな。
再度、コンコンとドアを叩いた。
「……なに……?」
小さな声で、そう言ったのが聞こえる。
何って、こっちが聞きたいっスよ。
「みわっち、オレなんか、怒らせちゃうようなことしたっスか?」
「……」
「みわっち、ねえ」
「……た……」
「え……?」
「あきと……抱き合ってた……!!」