第38章 嫉妬と喧嘩
先日のヤツとの1件から黄瀬くんの騒動と、毎日、心が休まる暇がなかった。
更にウィンターカップに向けてのプレッシャー。
ふたりとも、余裕がなかったんだと思う。
「みわ、先屋上行ってるよ。黄瀬と」
「うん! ごめんねあき! 先生に呼ばれちゃって……すぐ行くから!」
最近、たまにお昼休みは3人で屋上で過ごす。
10月に入って暑さも落ち着き、気持ちの良い季節が近づいてきた。
「ああ、神崎すまんな。このプリント、午後一で配っておいてくれ」
職員室に向かう途中の廊下で担任に会い、用事はすぐに終わった。
良かった。
予定よりもずっと早く屋上に行ける。
意外にも、私たちが行く建物の屋上は他に利用する生徒がいない。
だから、他人との関わりをあまり好まない私たちはよく利用した。
屋上へのドアを開けると、
抱き合っている黄瀬くんとあきがいた。
……え?
向かい合って、座っている黄瀬くんの上にあきが跨る格好だ。
……以前、私は同じような体勢で黄瀬くんに抱かれた事がある。
あきのスカートで2人の下半身は隠れて見えないが、もしかして……
ふたりは、何かを話しながら抱き合っていた。
あきの腰が微かに揺れている。
……スカートの中で交わっているのか。
ふたりは行為に夢中なのか、私に気付かない。
まだ、こんなに早く私が来るわけないと思っていたんだろうか。
釘付けになる。目が離せない。
あまりに衝撃的な画だったというのと、美しいふたりの抱き合う様は、妖艶で、美しかった。
現実離れしすぎていて、これはドラマか何かを見ているのではないか。
私、いま、いき、してる?
これ以上ふたりの姿を見ていられない。
静かに、ドアを閉めた。
その場に座り込む。
頭が、まっしろだ。
どうして?
どうして??
ふたりは、実は想い合っていたの?
うちに泊まりに来た時、私が寝ている間にもしかして……
背筋に悪寒が走り、走り出した。
どこに向かっているかは分からない。
「はぁっ! はあっ……!」
全力疾走で息切れする。
顔を上げると、そこはお馴染みの体育館だ。
無意識のうちに、ここに向かっていた。