第37章 話題
少しの間の沈黙。
……気を悪くしちゃったかな……。
カチカチとマウスの音、少ししてノートパソコンをパタンと閉じる音。
……黄瀬くんの気配に全神経が集中してる。
ノートパソコンをサイドテーブルに置いた音。
柔らかい足音。
ゴソゴソと布団に入る音。
もそもそとこちらに近づいてくる音……。
手が、身体に触れた。
こんなの、いつものこと。
黄瀬くんはいつも私を抱き締めて眠るし、私もそれに慣れてきた。
それなのに、毎日のことなのに、なんで今日はこんなに胸が高鳴るのか。
もう少しこちらに寄って来ようとしていて、シーツと肌が擦れる音がする。
その音が止まると、温かい身体と優しい香りに包まれた。
大好きな体温と、匂いだ。
冷えかけていた身体に、再び火が灯る。
やだ。何、なんでわたしこんな、こんな意識してるの……!?
黄瀬くんが身体を起こす気配がして思わず身構えていると、頬に唇が触れた。
「ごめんね、みわっち。オヤスミ」
……恥ずかしがってこんな風にしちゃったけど、好きならちゃんと、一緒に選ぶべきだったのかな。
えっちはひとりでするものではないのに、全部任せてしまった。
なんで黄瀬くん、怒らないんだろう……いっそのこと、怒られた方が楽なのに……。
思い切って身体を反転させ、目を合わせず懐に入り込んだ。
結局、正面から言うことが出来ない私。
「……怒ってないの?」
「……ん? んーん、いいんス。オレの方がちょっとデリカシーなかったっスから」
いつも優しい黄瀬くん。
私たちは付き合ってから今まで、喧嘩らしい喧嘩って、した事なかったんだ。